make up…

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 どういうツテかはわからないが、俺は藤木と遊ぶ約束を取り付けることが出来た。大学生の男女五名の中に俺が飛び入り参加するという形だ。俺の素性や、俺が男だということは、誰も知らない。  待ち合わせの地下広場で、それぞれが好きなように話し始め、藤木は「初めまして。君は高校生?何ちゃん?」と、俺に優しく声をかけてきた。  この遊び人め、爽やかに近づいてきやがったな!  腹の中でそう思いながらも、俺は微笑んで見せた。  他のメンバーも、俺が男とは思っていないようで「ヤバ―…高校生若いな」「可愛い!ヨロシク~」と、すんなり受け入れてくれた。  「で、名前は?」と、いかにもチャラそうな別の男がニヤニヤしながら聞いてきた。  「ダイチ……あ…オノダ です」  俺はうっかりと答えてしまいそうになり、慌ててモジモジしながら言い直した。    「イチちゃんか…イチちゃんって呼びにくいから、いっちゃんね!」  藤木はそう言って、無邪気な笑顔で俺の顔を覗き込んだ。  近えよ!  女装がバレやしないかと、肝を冷やす。  俺は咄嗟に俯いて、慌ててコクコクと首を小さく縦に振った。  喋るとボロがでそうなので、必要なこと以外は口を開かないことにした。  俺のこの様子を"照れている"と勘違いしたらしい藤木は「いっちゃんは、恥ずかしがり屋さんだね」と言って屈んでいた姿勢を直し、今度はピタっと肩を俺の肩に寄せてきた。    うおぉ…  イケメンがこんな風に接近して来たら、女の子はイチコロなんだろうな…  俺は、ただただ藤木のあざとさに感心したのだった。
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