あの日、君は。

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あの日、君は。

あの日。 今年の4月19日。 私はしばらく病欠していたけど、今日からはいつも通り学校に行く。 そして、いなかった間に席替えがあったみたいで、あまり話したことがない同級生が前後左右にいた。 今日は社会の日。 社会の授業を受けるときは、必ずプリントをもらって、それに沿った話を聞く。 で、プリントは席の各列の先頭に何枚か渡され、後ろに回されていく。 しばらくしたら前にいる痩せた男子から3枚ほどの紙が私に渡された。 あれ?3枚の紙から1枚とったのになんで2枚もあるんだろう... あ、簡単な引き算を間違えたな。 今日は調子が悪い日のようだ。 残った2枚の紙を後ろに渡そうと振り返ると、 後ろの人が早く紙を渡してくれと言わんばかりに左手を差し伸べているのが見えた。 顔も見ずに渡そうとした。 知らない人と会話するのは、そう得意じゃない。 でも、なんか感じ悪いかもな、と思ったので、渡すと同時に顔を見た。 女の子だ。 その瞬間、周りの景色にモザイクがかかった。 女の子が私を見る眼差しに私は引き込まれた。 抜けられないし、抜けたくもない。 なんでこんなに可愛いのかな。 何分振り返ったまま顔を見ているような感覚だ。 あ、やってしまった。 こんなに見つめてたら変態だと思われる。 紙から手を放して前を向いた。 でも時計を見て気が付いた。 後ろを向いていたのは3秒くらいだった。 なんでこんなに長く感じただろうか。 それからは何日か学校に行って授業を受けていても、なんだか集中できない。 あの子が気になって。 それで私は理性を失った。 彼女のことが知りたくて、アンケートを書いて靴箱に入れてしまった。 好きな食べ物とか、生年月日とか、好きなアーティストとか、色々聞いた。 でも、女子を好きになって最初にするアクションとしては不適切だ。 アンケートを靴箱から発見して、女友達と笑いながら開けているのを遠くから見て、後悔していた。 ばかだったなと。 でも、アンケートには答えて、用紙を渡してくれた。 ちょっと後悔したけど、嬉しかった。 ありがとう、って気持ちだった。 まぁ、彼女はいつも明るくて、可愛いし、関われるだけでうれしかった。 でも、私は思っている。 彼女はいつも真面目にノートを書いているし、書くときはメガネをかけている。 周りには隠しているのか知らないけど、すっごく努力家なんだろうな、って思った。 そういうとこも素敵だな、って思った。 でも、私にはひどい悩みがある。 彼女は素敵な人だけど、話のテンポというか、内容がかみ合わない。 じゃあ、こっちから合わせてみようって思った。 明日はそうしてみよう。 ...と思った夜だった。 天井を眺めてこう思っていた真夜中だった。 ~終わり~
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