短編小説 作品集②【著：Integral Snake】

夢の中のカラス

松永敏夫は定年後、妻と二人で田舎の小さな家に暮らしていた。毎日の生活は平穏で退屈だった。敏夫は趣味もなく、テレビを見たり新聞を読んだりすることがほとんどだった。妻は敏夫にもっと外に出て、人と交流したり運動したりするように勧めていたが、敏夫は面倒くさがって聞かなかった。

ある日、敏夫は夢を見た。夢の中で、彼はカラスになって空を飛んでいた。カラスの目から見た景色は鮮やかで美しかった。敏夫は自由に空を飛び回り、楽しさを感じた。しかし、その夢は長く続かなかった。やがて、カラスは地上に降りて、人間の姿に戻った。敏夫は自分がどこにいるのかわからなかった。周りには見知らぬ建物や車や人があふれていた。敏夫は不安になって、自分の家に帰ろうとしたが、道がわからなかった。

敏夫は夢から覚めたとき、ほっとした。自分のベッドに横たわっていることを確認した。妻も隣に寝ていた。敏夫は夢のことを妻に話したが、妻は笑って「面白い夢だね。でも、気にしないで。ただの夢だから」と言った。敏夫もそう思った。ただの夢だったのだ。

しかし、その日の午後、敏夫はテレビで衝撃的なニュースを見た。ニュースでは、東京都心で大規模な爆発事故が起きたと報じていた。爆発の原因や被害者の数はまだ不明だったが、画面に映し出された現場の様子は恐ろしかった。炎や煙や瓦礫があちこちに散らばっていた。そして、その中に敏夫は自分が見覚えのあるものを見つけた。それは、彼が夢で見た建物や車や人だった。

敏夫は信じられなかった。自分が見た夢は予知夢だったのだ。それも現実に起きる前に見たのだ。敏夫は妻にそのことを話したが、妻は驚いて「本当？それは偶然じゃないの？」「でも、どうしてあなたがそんな夢を見るの？何か意味があるの？」と尋ねた。敏夫もわからなかった。彼はただ不思議に思っただけだった。

それから数日後、敏夫はまた同じような夢を見た。今度はカラスではなく、ネコになって街を歩いていた。また同じような夢を見た。そして同じように迷子になった。

敏夫は夢から覚めたとき、ほっとした。自分のベッドに横たわっていることを確認した。妻も隣に寝ていた。敏夫は夢のことを妻に話したが、妻は心配して「また予知夢だったの？今度はどこで何が起きるの？」と言った。敏夫もそう思った。また予知夢だったのだ。

しかし、その日の午後、敏夫はテレビで衝撃的なニュースを見た。ニュースでは、大阪市内で大規模な地震が起きたと報じていた。そして、景色の中に敏夫は自分が見覚えのあるものを見つけた。まただ。

敏夫は信じられなかった。自分が見た夢はまた予知夢だったのだ。それも現実に起きる前に見たのだ。敏夫は妻にそのことを話したが、妻は怖がって「本当？それは偶然じゃないの？」「でも、どうしてあなたがそんな夢を見るの？何か意味があるの？」と尋ねた。敏夫もわからなかった。彼はただ恐怖に思っただけだった。

それから数日後、敏夫はまた同じような夢を見た。今度はカラスでもネコでもなく、人間になって街を歩いていた。人間の目から見た景色も鮮やかで美しい。また同じ夢。

しかし、敏夫は夢から覚めることができなかった。

彼はそのまま眠り続けてしまった。

妻は敏夫を起こそうとしたが、反応がなかった。

妻は慌てて救急車を呼んだ。

救急隊員が到着して、敏夫を検査した。

そして、妻に告げた。

「申し訳ありません。彼は脳卒中で亡くなりました」

妻は信じられなかった。

自分の愛する人が死んでしまったのだ。

妻は泣き崩れた。

そして、気づいた。

敏夫が見ていた夢は、自分の死を予知していたのだ。

敏夫は夢の中で、自分が未来の世界を見ていたのだ。

敏夫は夢の中で、自分が未来の自分に出会っていたのだ。

敏夫は夢の中で、自分が未来の自分からメッセージを受け取っていたのだ。

そのメッセージとは、この世界に別れを告げる言葉だった。

「さようなら、敏夫。私はあなたです。でも、私たちは違う時代に生きています。私はあなたよりも先に生まれて、先に死にます。あなたは私よりも後に生まれて、後に死にます。私はあなたの未来です。あなたは私の過去です。私はあなたに夢を見せました。私はあなたに未来を見せました。メッセージを送りました。そのメッセージは、この世界に別れを告げる言葉です。私はこの世界から去ります。あなたもこの世界から去ります。でも、私たちは別れません。私たちは永遠に繋がっています。だから、悲しまないでください。怖がらないで、笑ってください。さようなら、敏夫。ありがとう、敏夫。」

妻は、敏夫から、頭の中に伝わってきた、そのメッセージを聞いた。

心はむなしくなるのではなく、満たされた。

それから、妻は敏夫の夢を見て、敏夫の仏壇に手を合わせ、長く生きたそうだ...

そして、私は敏夫から、この話を聞いている。メッセージを受け取っている。未来の自分から。