こころのこる

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 ラクダはかねてから寡黙をまもっていた。  それに、もともといつも一人きりでいて仲の良い友人はまったくいない様子だった。  いつ見ても寝ぐせのせいか髪にまとまりがなく、制服には白く乾いた泥をつけていた。  また、何も映さないようにしているのか、半開きの目にはほとんど光がなかった。  スカートの丈は膝より下まであって、目立たずその場をやり過ごそうとしているかんじがかえって、あいつらのような連中を刺激したふうにさえ見えた。  あいつらは特に、ひ弱で大人しそうな人間を見ると放っておけなくなるのだろう。  今思えば僕も、あいつらの目にはそう映っていたにちがいない。    
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