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そして彼女の唇が微かに動いた。
「は……な……?」
花?
僕も、自分の机の上に飾られた一輪挿しの花を見た。
その百合の半透明の白い花弁が、太陽の光できらめいていた。
それから彼女は誰にも聞こえない小さな声で、僕の名前を呼んだ。
僕は思わず彼女を見た。
彼女も僕を見ていた。
ぴったりと目が合っている。
僕は思わず、語りかけた。
今すぐこのまま、逃げ出せ。
そして、もう二度とここへ戻ってくるな。
たぶん僕はそうしなかったから、ああなったのだから。
ラクダも、そうなってはいけない、けっして。
それにさ、この教室の誰からも好かれなくたって、全然生きていけるぜ?
これ、ほとんどヒロノの言葉だけど。
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