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「では、お嬢様。
おやすみなさいませ」
「おやすみなさい」
灯りが消され、執事がいなくなる。
これからのことを考えると眠れなくて、何度も寝返りを打った。
それでもようやく眠気が訪れた頃。
――ギシ。
ベッドが僅かに軋み、目を開ける。
「……な……っ」
声を上げるより先に、口を塞がれた。
男は手際よく彼女を縛り、目隠しをして肩へ担ぎ上げる。
「んー!
んー!」
暴れたところで男は堪えていない。
不審者の侵入を許すなど、執事はいったいなにをしているのか。
しかし彼女はその理由が、わかっている気がしていた。
乱暴にどこかへ放り込まれた。
すぐにガラガラと凄い勢いで走り出したところみるに、馬車なのだろう。
……どこへ連れていこうと?
不安はあったが、何故か恐怖はなかった。
どうしてか男が、自分のよく知った人間だという確信があったから。
ずいぶん走って馬車は止まった。
また荷物のように扱われ、下ろされたかと思ったら目隠しが外される。
「……」
見上げた先にあったのは、予想どおり執事の顔だった。
なにか言いたいのに、猿ぐつわを外してくれない。
足の拘束は解いたのに、腕は縛り上げられたままだった。
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