極夜~お嬢様は終わらない夜を過ごす~

4/5
前へ
/16ページ
次へ
「では、お嬢様。 おやすみなさいませ」 「おやすみなさい」 灯りが消され、執事がいなくなる。 これからのことを考えると眠れなくて、何度も寝返りを打った。 それでもようやく眠気が訪れた頃。 ――ギシ。 ベッドが僅かに軋み、目を開ける。 「……な……っ」 声を上げるより先に、口を塞がれた。 男は手際よく彼女を縛り、目隠しをして肩へ担ぎ上げる。 「んー! んー!」 暴れたところで男は堪えていない。 不審者の侵入を許すなど、執事はいったいなにをしているのか。 しかし彼女はその理由が、わかっている気がしていた。 乱暴にどこかへ放り込まれた。 すぐにガラガラと凄い勢いで走り出したところみるに、馬車なのだろう。 ……どこへ連れていこうと? 不安はあったが、何故か恐怖はなかった。 どうしてか男が、自分のよく知った人間だという確信があったから。 ずいぶん走って馬車は止まった。 また荷物のように扱われ、下ろされたかと思ったら目隠しが外される。 「……」 見上げた先にあったのは、予想どおり執事の顔だった。 なにか言いたいのに、猿ぐつわを外してくれない。 足の拘束は解いたのに、腕は縛り上げられたままだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加