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「面白い、面白いのう。
外の世界にはそのように、面白いことがいっぱいなのだな」
ひとしきり笑って気が済んだのか、はぁっ、と小さく、ため息ともつかぬ息を女は吐き出した。
「我はこの屋敷から出たことがないし、このまま朽ちるまで出ることもないであろう。
……一度でいい、外へ出てみたかった」
ふふっ、と淋しげに女が笑い、胸の奥がツキンと痛む。
そのせいか、思わず。
「俺が!
俺が貴方を、外の世界へ連れ出してあげます!」
自分でもなにを言っているのだとは思う。
そんなこと、できるはずはないのに。
けれど後悔はない。
「其方が私を外へ。
そうか。
……そうなったら、いいであろうな」
あんなに強気だった癖に、気弱な女にイラついた。
「絶対に、連れ出しますから!」
御簾内へ手を突っ込み、彼女の手を掴む。
瞬間、自分のやったことに気づき、首が!と心配したものの。
「……待っておる」
女がそっと、その手を握り返す。
約束するように強く、男はその手をまた握った。
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