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その日から、いかにして彼女を連れ出すか算段した。
連れ出すだけなら簡単だ、あの屋敷の警備はないに等しい。
連れ出したあと、いかにして彼女に生活をさせるかが問題なのだ。
ときどき、屋敷にも忍び込んで彼女に会いにいった。
毎回、男のする話を笑って聞いている。
女房は男が訪ねてくるのを、黙認しているようだった。
準備は困難もあったが着々と進み、彼女が住むには問題ない住居も手に入った。
多少の手入れが必要でしばらくそれにかかりきりになり、彼女を訪ねられなかった。
これが終われば彼女を連れ出せる、うきうきと作業を終わらせ、ようやく彼女のもとを訪れた男だったが。
彼女はとうに――奪い去られていた。
誰もいない屋敷で、呆然と立ち尽くす。
……自分がいない間に、いったい、なにが。
方々を聞いて歩いてわかったのは、とある貴族に見初められ、国司になったその男に着いて遥か遠くの地へ旅立ったということだった。
「あれは、俺が外へ連れ出すと約束したのだ」
すぐに準備を整え、女のあとを追う。
あれは、あれは俺のものだ。
奪い去るなど何人たりとも許さぬ。
妄執に捕らわれた男は必死にあとを追ったが、たどり着いた先に女はいなかった。
ふとしたことで追い出され、そのあとはわからないのだという。
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