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─ よもや、子供やないんかえ?
─ いいや、確かに子供に違いないわえ
坊やのお目めがピクピクと痙攣をする様に細かく何度も瞬きしています。
どうやら、気がついたようです。
お隣で毛を逆立てて、音を立てずに歯をむいていたロデムは、坊やが気が付いたのを見ると坊やに向き直って、ホッとした様にニャアと短く鳴いてから、坊やの顔をペロペロと舐め回します。
─ やや、猫がおるやないかえ
─ おお、猫がおるやないかえ
二つの影は今ではもう一つの影となり、
それでも頭だけを二つ残して、それが時々互いに向き合って話し合うのです。
─ 坊や、猫は裏口から外へ逃してお上げ
─ 僕ちゃん、猫を何処かに追い払ってちょうだいな
─ やや、焦らぬが良いぞ金鼠
─ もう辛抱堪らんわいな銀鼠
双頭の大鼠は、
最近大きな獲物に有りついていないので、
お腹が空いて死んでしまいそうなのです。
かと言って、坊やはまだ目が覚めたばかりですので、動くことは叶いません。
まだ頭がぼんやりして自分がどうなっているのかよく分かっていませんし、何せ手足が痺れていて、分かっていても動かすことができないのですから。
朝になって、二階から降りてきて、リビングを開けましたら変な臭いがして、パパとママがリビングで布団も敷かずに並んで寝ているのが見えてから、苦しくてそこからの事は覚えていません。
どうやら玄関でロデムと一緒に寝てしまっていたようです。
日も暮れてから随分時間が経ちましたから、外も家の中も真っ暗です。
大鼠はもう居ても立っても居られないといった様子で、引き戸をガタガタと揺らして外そうとします。
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