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─ デンキュウよ、デンキュウ
─ そや、早ようにデンキュウよ
これは大変です!
今は暗闇に守られている坊やとロデムですが、
電気が点いてしまえば、直ぐに見つかってしまいます。
どうしましょう!
大鼠は壁に前足を当てて、少しずす壁伝いに移動して、手探りでスイッチを探します。
─ やや、あったわえ
─ おう、確かにあったわえ
─ これよ、これよ
─ あな嬉しや、嬉しや
大鼠は大きな体を揺すって小躍りしてから、
ふと立ち止まって、
─ 子供を喰うのは久しいのう
─ まこと、久しいのう
と言って、やおらスイッチに手を掛けたのです。
次の瞬間、
── パチンッ!!
一瞬辺りが明るくなりました。
─ あな嬉し、そこにおったか
─ まこと、そこにおる………………
言い終わるか終わらないかのその時でした。
大爆音がして、玄関もリビングもパパもママも、坊やもロデムも、そして大鼠も、全てが吹き飛んで、何もかもがごちゃ混ぜになって、玄関から外へ飛び出して行きました。
そして──
もうその時には、
既に二階の窓にいた坊やとロデムは、
大好きなママに
ご飯ですよと呼ばれて、
真夜中だと言うのに
湯気立ち上るご飯の前で、美味しそうに缶ビールで喉を鳴らすパパの横にちんと座って、
今日初めての食事をいただく所だったのです。
【幸せな食卓 ─ 完】
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