フレンチトースト

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「おはよう」 「へ?」 目が覚めたら、古暮(こぐれ)課長が隣にいた。 おかげで、変な声が出る。 「抱きついてくるなんて、瀬谷(せや)は見た目によらず情熱的だな」 言われて初めて、自分が課長に抱きついて寝ていたのに気づいた。 「えっ、あっ」 慌てて課長から離れる。 おかげで全身がみるみる熱くなっていった。 「あの、その」 「とりあえず、顔洗って朝食だな」 もじもじする私を無視して、課長はベッドを出ていく。 その背中を呆然と見送った。 ひとりになり、改まって羞恥に耐えられなくなって、布団に潜り込む。 ……なんでこんなことになっているんだっけ。 寝起きとパニックで上手く働かない頭を叱咤し、必死で昨晩の出来事を思い出した。 その金曜は、残業だった。 終業間際になって取引先から、急に変更事項が舞い込んできたのだ。 しかも社外持ち出し禁止の資料があるうえに、この土日は改装工事が入るとかで出勤禁止だ。 「……今日、やってしまうしかないのか」 私が遠い目をしたのは、いうまでもない。
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