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「ああ、そうですね」
課長の理由が私と同じで、なんか少し、おかしかった。
仕事をしながらちらりと古暮課長を盗み見る。
ビジネスショートの髪をラフにオールバックにし、銀縁スクエアのハーフリム眼鏡をかける課長は、間違いなくイケメンだ。
年は私より五つ年上の三十二歳と課長としては妥当な年齢だが、もうすぐ部長に昇進という噂だし、エリートなんだと思う。
「飲むか?」
「あ、ありがとうございます」
唐突に目の前に現れたカップを受け取る。
課長がわざわざ、コーヒーを淹れてきてくれていた。
「疲れているときはミルク二杯、砂糖二杯だったと思うが、あってるか?」
「あって、ます……」
自分のカップを手に、課長が席に戻っていく。
飲んだコーヒーはまさしく、私好みだった。
どうして古暮課長が、知っているんだろう。
そしてこうやって私にも気を遣ってくれる課長に、密かに憧れていた。
「ヤバい、ホチキスどこだっけ……?」
開けた引き出しの中は……カオスだった。
私は仕事はできるが、整理整頓がとにかく苦手なのだ。
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