当日でした

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「ミルヒがそう言うのなら、分かった」  父が随分と神妙な顔をしているので首を捻ると母が苦笑して付け加える。 「私達は、ミルヒが実の両親に会いたい、と勝手に考えていたのよ。でもあなたの気持ちを聞いて思い違いをしていたことに気づいたの。結婚についても、あなたは簡単に見つかるはずがないって言っていたのに、知っていると匂わせられただけで婚約を受け入れたでしょう? それなのにこんなことになってしまって。いつまでもあなたを子どもだと思って意見を聞かなかったのも悪かったわ。だからミルヒがそこまで言うのなら、もう探すことに拘らないって決めたのよ」  両親には両親の理由があって長年、私の実の両親を探していた。  でも私は私でこの目の前にいる人達が私の家族だから実の家族に興味はなかった。  だからお互いの意見を擦り合わせて。  見つかったら見つかったで構わないけど、敢えて探すことはしない。  という結論に至った。  抑々。  あの子爵が本当に私の実の両親について知っていたなんて思ってない。  我が国は高位貴族も下位貴族も平民も関係なく、金髪・銀髪・黒髪・茶髪・白髪(はくはつ)に分かれる。その色合いの明暗というか濃淡に差はあるけれど、濃い金髪だからといって高位貴族の血筋とも限らないし、白に近い茶髪だからと言って高位貴族の血筋とも限らない。  平民でも金髪銀髪白髪も居るし、高位貴族でも黒髪茶髪白髪も居る。  ただ平民は黒髪茶髪の人が多くて高位貴族は金髪銀髪白髪の人が多いだけで、学園生活を一年しか送っていなかった私の目から見て、十人から二十人の高位貴族の子息子女が集まれば、そのうちの三人から五人くらいは黒髪茶髪がいる。その他は金髪銀髪白髪という感じ。  だから髪の色に特徴なんてない。  ついでに言えば目の色も特徴なんてない。  高位貴族は緑や青に紫の人が多いけれど黒や茶に黄と赤も居る。平民は黒や茶に黄が多くて緑と青と紫と赤は少ないかもしれない。  白髪の人は貴族も平民も少ないし赤い目の人も貴族平民問わず少ないかな。  だから外見の特徴で私の実の両親のことなんて分かるわけがない。  ちなみにブルクテン男爵こと父は茶髪に焦茶の目。夫人こと母は黒髪に黒目。  私は白よりの茶髪に黄色の目。  ミルヒは母そっくりの黒髪黒目。  トリルは金よりの茶髪に明るい茶色の目。  だからまぁ、外見の特徴だけなら私はブルクテンの家族から浮いてない。  ……色合いだけで、顔が両親のどちらにも似ていないのだから、まぁ両親と私を見ると明らかに私は誰の子なんだ? って話。  どちらかの祖父か祖母に似てる、と言っても良かったらしいけど、戸籍が養子になっている以上、変に誤魔化すのは良くないってことで、家族で私は養子だよって周囲に教えている。  貴族になっちゃったからね。変に誤魔化して父の商売の邪魔になっても困るから。  尚、私を拾った時、変わった持ち物もなかったらしい。  家族の顔が分かる姿絵とかももちろん、着ていた服も綿の生地で平民や下位貴族なら使いそうな赤子の服らしいし。刺繍が入ってるわけでも無いし、私が入ってた籐籠もよく見かけるものらしかった。  ……それで拾った両親じゃなくて、どうして全く私のことを知らない子爵が実の両親に心当たりがあるんだって話で。  騙されているんじゃないか、と思ってたけどやっぱり騙されてたね。
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