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呼び鈴を鳴らすとややしてレオが現れた。手紙を書き終えたので、父の手紙と共にモレーン先生に出して欲しいことと、後、父に時間が取れるか確認して欲しいことを告げる。
レオは少し居なくなり父に確認を取って来たと思ったら、直ぐに戻って来て今なら良いとのこと、と言うので執務室へ向かった。ドアをノックして中に入る。
「どうした?」
「ねぇお父さん、便箋をね、売ってみない?」
「は?」
私は自分で書いていた便箋のことを話す。
「書き終わって、なんで三枚にもなったのかなぁって何度も見直したんだけど。それで気づいたんだよね。私、便箋に書く文字が大きいの。だから直ぐに一枚が終わってた」
「ああ、よくあるな。小さな子だと特にそうなるだろう」
「そうなの。だからさ、便箋にこう……線を引いてみて、その線引きした間に文字を書くってしたら一文字の大きさがそれなりに揃いそうじゃない?」
私の提案に父は目を丸くした。
現在我が商会を含めた商会や文具店で売られている便箋の殆どは、同じ大きさに成形された真っ白な紙が十枚セットで売られている。偶に大きさも揃ってないのがあるけど。尚、封筒は別売りで。
でも、その真っ白な便箋に上下に線を引いてその線から文字をはみ出さないように書いたら文字の大きさにバラつきが出ないので、私みたいに大きく文字を書いて便箋を無駄に費やすことも無いと思うの。
もちろん、便箋を何枚も使えば、それだけ早く便箋を買うことに繋がるのは分かるけど。
「ふむ、それは良い案かもしれないな。平民は兎も角、貴族は手紙の文字すら美しい方が好まれる。文字の大きさが揃えばそれだけ見栄えが良くなりそうだ。ついでだから学園で使用するノートも線引きをしてみるか」
父が大きく頷いて私の提案を飲んでくれる。
あー確かに。
ノートも便箋と同じで同じ大きさに成形された帳面に表紙を付けてあるだけのもの。そこにどれだけ綺麗に書けるか、と慎重になって書いているようだった。
虐められていたのに、そんな噂や四方山話が耳に入ってくるのだから、私も商人の娘だったのか、と自分をちょっと笑ってしまった。
「どうした?」
笑った私を不思議そうに父が見る。
軽く首を振ってやってみる価値はある? と尋ねれば。
「ミルヒがやってみなさい」
と任された。
理由の一つが私の発案だということ。二つ目は既に売られている商品のアレンジだから、失敗してもリスクが低いから売り上げに影響しないだろうこと。三つ目は成功したら、私の自信に繋がるだろうということ。
だった。
……絶対、私に自信を付けさせたいからじゃない。
そう思ったけど、失敗しないとも限らないし、黙って受け入れてやってみることにした。
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