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「我が子爵家はこんな新興貴族とは違い、脈々と続く貴族家だ! 何が我が子爵家の有責での婚約破棄だ! この娘がどこの馬の骨か分からん捨て子だったのが悪いのだろうが! 而も妹とは違い可愛くもない平凡な容姿だ! こんな顔の娘ではそりゃあクイロも駆け落ちをしたくなるというもの! せめて妹だったのならまだ良かったというに。さすが捨て子だ。誰の血が流れているのか分からんから、こんなに平凡な顔なんだな! 新興貴族の男爵家が実の娘ではなく、こんな捨て子を我が子爵家の婚約者にしたのが悪い! 我が子爵家の有責などではない! この娘が全て悪いのだ!」
さすがにこんなことを言い出す子爵に、父だけでなく神父と僅かながらも結婚式に参列しようと、子爵家や我が家と付き合いのある下位貴族の当主夫妻が怒り出した。
ただでさえ、参列者の方々はそこそこに忙しい中で、急に決まった結婚式に対して予定を組み込んで出席してくれたのだろう。断られても文句を言えないくらい急な予定。
それでもなんとか予定をやりくりしてくれただろう、と推測出来るのに、参列してみたら花婿は駆け落ちをしたという。
それでも誠心誠意謝れば何とか許せる気持ちになれたものを、新興貴族とはいえ男爵である父が丁寧に頭を下げたのに対し、子爵は自分達に非はない、との暴言。おまけに駆け落ちした息子を庇って花嫁を詰る始末。
それも花嫁が養女だということを知らなかったのならばまだ同情出来るが、知っていたにも関わらず捨て子だから、と貶める。
その上喚いて婚約破棄にも応じない。花嫁に非があるとまで言い募る。
これにはさすがに参列をしていた貴族当主夫妻が怒りを通り越し呆れ返って、後日談として子爵家との付き合いを控える結果を生み出したのは、至極当然のことであった。
さておき。
怒り出して子爵家に非はないと言い張る子爵を、神父が無視をして子爵家有責の婚姻破棄を厳かに告げる。
貴族の結婚は国王陛下に許可を得るものだが、離婚も同じく国王陛下の許可が無いと出来ない。だが、今回の事態は結婚式当日のものであるため、教会側が証人となって国王陛下に離婚許可を願い出ることを父である男爵に約束してくれた。
教会も認めてくれたなら、スムーズに婚姻破棄となるだろう、と私は他人事のように安堵した。……けれど暫くは目立ちたくないから、ひっそりとしていたい。
家族に迷惑をかけてしまったから。それだけは申し訳ないと思って肩身の狭い思いをすることになりそう。
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