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子爵はかなり怒りまくって妻を連れて帰って行ったけれど、少ないとはいえ招待客が居る前であんな失態を犯したわけだし、その上謝罪の一つも無かったし。
下位貴族の方々だから国王陛下に直接御目通りする機会なんて殆ど無いかもしれないとはいえ、実は何人か王城の文官勤めの方も居ると父が言っていたので、もしかしたらその辺の方が上司にこの結婚式について報告されて、報告を受けた上司が貴族の婚姻を司る部署というのがあるらしいけど、そこに話を持って行って教会からの報告と合わせて調査が入る……かも、しれない、らしい。
あまりよく分からないけれど、父と神父の話からそんな風に予想した。
ちなみに、父は怒りまくっていて。
母とハンネは怒りながら泣くという器用なことをしていて。
幼いトリルはドレス姿の私を見てご機嫌のままというカオス。
「ねーねー、きれい。おしめしゃま?」
……トリルはまだ言葉がところどころ怪しいので借りたドレスを汚さないようにトリルを抱っこは出来ないけれど頭を撫でて答えた。
「おひめさまじゃないけど、おひめさまに見えるかな?」
「うん、おひめしゃま!」
少し言葉が直った。お姫様、ね。トリルにそう見えたならこのドレスを着た甲斐があったというもの。
それから私は参列者の皆さまに頭を下げた。
「お忙しい中をお越し頂いたのに、このようなことになってしまい、すみませんでした。私の至らなさが原因でもありましょうが、お相手の方には駆け落ちしてでも添い遂げたい方がいらっしゃったようです。ご寛容頂けましたら有り難いです。本日はまことにすみませんでした。ありがとうございました」
この程度のことは、学園で虐められながらも授業にマナー教育があったので言えるようになった。ついでに最低限の知識と教養も教わったので多分、変なことは無い、はず。
虐められたとはいえ、授業中は何かあったわけじゃないから、寧ろ必死に勉強することが出来た。
通いたいわけじゃ無かったけれど、通うことになってしまってお金を出してもらった以上、必死に勉強するくらいじゃないと、父と母に申し訳なくて仕方なかったから。
……もちろん、拾って育ててもらった恩返しの一環だとも思っているけど。
こんなことで全ての恩を返せるとは思ってない。でも、何が恩返しになるか分からないから一年で勉強出来る限り勉強した。
……結果、こうして今、参列者の方々に頭を下げてそれなりのことが言えている、と自負している。
まぁ私としては、正直なところ、結婚が無くなってラッキー。という気持ちしかないけれどね。
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