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容疑者
だが未亜はボクを励ますように微笑んだ。
「フフゥン、大丈夫よ。犬のおまわりさん」
「えッ?」
「名探偵未亜が、すぐに事件を解決してあげるわ。すべての謎はこの未亜に解かれたがっているのよ」
自慢げに胸を張ってみせた。
「はァ」マジか。
なんて自信過剰な女の子なのだろう。
いくらミステリーマニアと言ってもフィクションとリアルな事件とはまったく別物だ。
「おいおい、お嬢ちゃん。捜査の邪魔をするな。とっとと関係者以外は出て行け。シッシッ」
鰐口は猫田未亜を睨みつけて追い払おうとした。
「ふぅん、なによ。野良猫じゃないわ。未亜だって立派な関係者よ」
だが未亜は怯まず、居座るつもりだ。顔に似合わず図々しい。
それにしてもよくよくリビングを見回すと被害者の金田はヤクルトスワローズのファンなのか、グッズや写真などが大量に飾られていた。
やがて、金田邸に四人の容疑者が揃った。四人とも動機は充分らしい。アリバイもあやふやだった。誰が真犯人でもおかしくない。
まず愛人の百田マリリンから事情聴取した。最近、手切れ金の事で揉めていたらしい。
「はァなんで私が容疑者なのよ。失礼ねェ」
百田マリリンは刑事たちに食ってかかった。新人刑事の日吉が彼女をたしなめた。
「まァまァ、落ち着いてください。ええっと百田さんは金田の?」
タブレットを見ながら訊いた。
「愛人よ。悪い」
ふて腐れたように応えた。
「はァ最近は手切れ金の事で喧嘩が絶えなかったそうですが」
「そりゃァ、パパのせいよ。金払いが悪いから。ケチなのよ」
そっぽを向いて応えた。
「あなたは金田さんからなんて呼ばれてましたか?」
不意に横から未亜が割り込んで愛人の百田マリリンに訊いた。
「え、マリリンだけど。なんなの?」
「ハイ、そうですか。どうも」
未亜は軽く会釈した。
続いて前妻の山部桃子から事情を聴いた。
「山部さん。あなたは推しのホストに借金してまで貢いでいるそうですね」
また新人の日吉刑事が事情を訊ねた。
「そんなこと関係ないでしょ」
「とてもではないが、金田さんとの慰謝料では賄いきれなくなった。借金もかなりの額になっているんじゃねえのか」
続けて鰐口も尋問した。
「うゥッ、だったらなんだって言うのよ」
「しかし今回、金田さんが殺された事で、アナタには多額の保険金が支払われますね。三億円ですか」
「はァだから何よ。私が保険金目当てに彼を殺したって言うの?」
「さァどうでしょうか」
「山部さんは金田さんからなんて呼ばれてましたか」
また未亜が割り込んで訊ねた。
「えッ、それは桃子だけど」
「フフゥン、なるほど」
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