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謎は解かれたがっているのよ
続いて菱沼誠司の事情聴取が行われた。
彼は金田に騙され多額の借金を背負っていた。
「あなたは相当、怨みがありますよねェ。金田さんに」
日吉刑事が菱沼に訊いた。
「はァ当たり前でしょう」
「殺したいくらいですか?」
「さァね」ごまかすように視線を逸らした。
「あなたは金田さんからなんて呼ばれていましたか?」
すかさず、未亜はニコニコして割り込んで訊いた。
「えェ?」菱沼は多少、考えながら。
「そうだな。菱沼だけど」
「なるほどそうですか」
「ンうゥ……」
こんな事を訊いて何がわかるのだろう。鰐口も憮然とした顔で未亜を睨んだ。
最後に桃山海斗から事情を聴いた。
「あなたは金田さんと元愛人との間に出来たお子さんだそうですね」
「ああァ」視線を合わせずうなずいた。
「ところが金田さんは認知してくれなかった」
「そうだ。まったく資産家のクセにケチなんだから」
「あなたは金田さんからなんて呼ばれていましたか?」
また未亜が割り込んだ。
「えェッ、海斗だけど」
「なるほど、どうも」
未亜はニコニコと笑顔を浮かべた。
「ところで、皆さんは、金田さんがヤクルトスワローズのファンなのはご存知ですか」
さらに未亜は容疑者たち全員に訊ねた。
「ええ、もちろんよ。年間シートも買ってるくらいだしねェ。どんだけ使っているか。それなのに慰謝料はケチりやがって」
前妻の山部桃子が不満げに応えた。
「なるほど江戸っ子なんですか?」
「まァね。べらんめえ口調よ。いつも」
「すると『ヒとシ』の区別がつかないんですか」
「そういえば、そうね」
「フフゥン、わかりました。すべての謎はこの名探偵、未亜に解かれたがっているのよ」
「なッなにィ……」
容疑者たちは文句を言いたそうだ。
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