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名探偵未亜
「ご覧ください。ここにダイイングメッセージが遺っています」
未亜はリビングのカーペットを指し示した。
「ダイイングメッセージ?」
一様に不審な顔で覗き込んだ。カーペットには『もも』と記されていた。
「ふぅん、『もも』か。だったら、私は『もも』なんて呼ばれないわ」
百田マリリンは余裕の笑みを浮かべた。
「オレもだ。あの人から『もも』なんて呼ばれたことはない」
桃山海斗も憮然とした顔で応えた。
「ボクもまったく関係ないね。菱沼だし。名前も誠司だからね」
おどけたように肩をすくめた。
「なるほど、残るは前妻の桃子さんだけですね」
日吉が山部桃子を見つめた。
「待ってよ。私は知らないわ。本当よ。死んで欲しいとは思っていたけど、殺したりしてないわ」
桃子は必死に弁解するがみんな白い目で彼女を見つめた。
だが未亜だけは違った。
「そうですね。でもダイイングメッセージは後からいくらでも細工ができるんですよ」
「えッあとから細工?」
「そうよ。犯人は金田さんを刺し殺した後、彼が『しし』とダイイングメッセージを遺した事を知ったんです」
「え、『しし』?」
「そうです。そして犯人は考えたんです。『しし』を細工して『もも』にすれば、もしかして桃子さんや百田さん桃山さんに罪をなすりつけられるとねえェ」
「なんだって、『しし』を『もも』に?」
「ええ、チョンチョンと書き足せば、簡単に『もも』になるでしょ」
「ううゥ……、確かに」だとしたら。
「そうですよね。菱沼さん?」
「えッ?」
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