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2023/11/01
スプレーマム:『あなたを愛します』
「ヨゾラー。ごはんだよー。」
猫缶を開けると、その音を聞きつけてキャットタワーから首に赤いリボン金色の鈴をつけた黒猫がやって来た。
彼女がはじめて黒猫のヨゾラと出会ったのは半年ほど前。
会社帰りにいつも寄る人気のない公園でその日はどこからともなく、みゃあみゃあと酷く悲しそうに鳴く声が聞こえた。
声の方へ行くと、そこには拾ってくださいと書かれた段ボールに入ったとても綺麗な黒い子猫がいた。前日の雨に濡れていたので毛が大分汚れており、すごく寒そうに震えている。思わず、着ていたカーディガンでその子猫を包み、そのまま病院へ駆け込んだ。
かなり衰弱してはいたが幸い大事には至らなく、点滴と食事と手当てで、おもちゃでじゃれ遊ぶ程回復した。そしてその子猫を引き取り、あの出逢った日がとても月の美しい夜だったのでヨゾラと名付けた。
はじめこそ懐かなかったが徐々に心を開いてくれる様になり、はじめて子猫の方からそばに歩み寄ってくれるようになったときは嬉しさの余り涙を流した。
彼女はヨゾラと出会ってからとても満ち足りた日々を送っていた。ヨゾラと出会うまで彼女は愛おしいという感情を知らなかった。ましてや自分にはそういう感情がないものだとばかり思っていたのだ。愛おしいという言葉の意味を頭では理解していたが心の済では全く理解出来ていなかったがヨゾラと暮らしてふれ合う内に自分の中に陽だまりのような温もりが芽生えていた。
その瞬間漸く、あの言葉の意味を心で理解したのだ。
そして、ヨゾラと暮らして行く中で気付いた事がもう一つだけある。
ヨゾラはとてもやんちゃでイタズラ好きということ。
彼女が仕事をしているとキャットタワーから突然彼女の背中にダイブしてきたり帰宅してきた彼女驚かそうと壁に隠れて飛び出してみたり、とあげてしまうとキリがないがとてもイタズラ好きだ。イタズラが上手く行かずに不発してしまうと拗ねてしまうが彼女からしてみるとそんな所もまた愛らしいのだ。
そんな感じでヨゾラは今日も家で仕事中の彼女のパソコンのキーボードの上で彼女の手に絡みついてる。
月明かりに照らされた窓辺のスプレーマムがそれを優しく見守っている。
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