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再会
「シラカワはん、動けますか?とりあえず…よっと、こん人ら連れて屋敷へ行きましょう。」
由那はこくりと頷くと立ち上がり、亮介を肩にかけようとした。しかし160足らずの由那では180近い亮介を運ぶことは叶わなかった。
「…わっしが運びますわ。…よっと!」
ジャバは軽々と亮介を持ち上げるとそのまま開けっぱなしの戸の元へ向かい、そこで降ろした。
「こっからは頼んますね!只人の手当ては只人の方が詳しいでしょ?わっしはあいつらをー。」
そういうとジャバは袖をまくりロロズたちの元へと向かった。
「さってと、起きて暴れられたら困るしとりあえず縛っとくかー。」
ジャバは近くにある木を中心に二人をぐるぐるに縛った。
「あとはわっしの服やら武器やな。」
ぱんぱんと手をはらうと颯爽と倉庫へと走った。
「う…ん…」
ゆっくりと目を開くと何度も見た天井が写った。すぐに意識がハッキリとし素早く体を起こした。
「いった!!?」
立ちあがろうとすると足に重い痛みが走った。そこで自身がトラバサミに噛まれたことを思い出した。
「…ぃぎ!?」
恐る恐る足を見ると歯が刺さった部分から血が垂れ固まっており、全体的に赤黒くなっていた。しかし先ほどより冷静な姫乃はゆっくりと呼吸した。すると気持ち痛みが緩和したように感じ、だんだんと落ち着いてゆく。目を瞑りスースーと音を立てて呼吸していると突然背後からガタンと物音がした。その瞬間、足の痛みよりも重要なことを思い出し一気に鼓動が早まる。ゆっくりと時間をかけ後ろを振り返るとそこには由那の姿があった。
「-姫乃…ちゃん…!」
目に涙をためた由那がおぼつかない足取りでこちらに向かってきたかと思うとそのうち両手を前に出し姫乃へと駆け出した。
「由那!!」
姫乃もそれを受け入れるよう手を出すと由那が胸元に飛び込んだ。足の痛みなど忘れ、約8時間ぶりの再会に二人は涙した。
「ごめんね、由那。私のせいで怖い思いさせちゃって…。」
「なんで姫乃ちゃんが謝るの?私こそー」
二人で抱き合っていると
「おおう、これはこれはお邪魔しました。」
と後ろから聞き覚えのない声が聞こえた。すると由那がパッと離れ
「あ、ジャバさん。」
と返した。姫乃は涙を拭き声の方へ振り返った。
「ども、起きはったんですね。」
2mは裕に超える身長、顔の端まで伸びた口、そしてそこから覗く鋭い歯。ジャバを見た姫乃は顎が外れたように大口を開けた。そのまま固まってしまった姫乃を見てどうしたんですと声をかけた瞬間、姫乃が声にならない悲鳴を上げた。
「いぇえええええええええええええええ!!!???」
甲高いその悲鳴にジャバは耳をふさいだ。由那は特に気にすることなくいつもの様子だとニコニコと笑みを浮かべた。
「…なんだ?やかましいな…。」
ジャバともう一人声の届いた亮介が目を覚まし、体を起こした。それを見た姫乃がまた大口を開け叫ぶ。
「いぇええええええええええええ足立亮介ぇぇぇぇえええ!!!???」
姫乃は気持ちの悪い動きで部屋の奥へと逃げていった。
「…なんや、わっしよりトカゲっぽいすな。」
「ぷ!うぷぷ…!」
ぼそっとつぶやいたジャバの一言についに由那は吹き出し笑っていた。この世界にきて心の底から笑えたのはこれが初めてだった。
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