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「いづっ!!」
怪我を負った足に冷水をかけるとツンと張った痛みが走った。
「ごめんなさい…!」
水をかけた由那が反射的に謝ったが姫乃はニコッと笑い大丈夫と答えた。姫乃の右足は明らかに腫れ上がっており素人目でも骨折していることがわかる。亮介が持ってきた由那の鞄に入ったタオルを患部に巻いた。
「えっと、足立さんとりあえず怪我に清潔な布を巻きました。」
「後は怪我を刺激しねぇように添え木を巻いてろ。」
隣の部屋にいる亮介に声をかけるとすぐに返事が返ってきた。いつもケンカで怪我ばかり作っている足立さんは怪我のエキスパートらしく、応急処置は大抵できてしまうとのこと。
「うぇぇぇ!?フラットの毒付きナイフ食らったんすか!!?よく生きてましたね…。」
こくりと頷き、ポケットにしまっていたフラットのナイフをジャバに差し出した。大きな音を立て生唾を飲む様子に流石の亮介も冷や汗をかく。
「そんなにやばいもんなのか?」
ジャバは激しく何度も頷いた。話を聞くと奴らは知能は低いものの毒に関しての知識はこの森随一、右に出るものはいないらしい。
「毒にあんま詳しくないわっしでもわかる、こりゃポイドネークの毒がベースに塗られてますわ。猛毒っすよ、猛毒。」
「…確かにそれを喰らってから動けなくなるまでが早かった。それだけ即効性があるんだな。」
「いやいや、即効ちゅーか只人なら即死級ですから!ほんまこれ喰らってなんであんな動けんのか…。」
おおよそだが要因は2つあると思う。まず毒に気付いた際、一度水で洗い流したこと。まぁ正直こっちはあまり関係ないだろう。もう一つは毒の塗りや調合、何らかの要因でそれほど身体に入らなかったこと。どっちかというとこっちが濃い。
上裸になり刺された部位が露わになるとこの屋敷で見つけた清潔そうな布を巻く。
「にしても、兄さんラッキーでしたね。あのおっさんが≪解毒≫を使ってくるなんて。…まぁあいつもまさか兄さんが毒状態とは思ってなかったんでしょうが。」
≪毒化≫は通常相手に毒状態を付与するという魔法だが、もともと毒状態だった場合のみ効果が変わり≪解毒≫の魔法になるらしい。
「(だからあの時一気に体が軽くなったのか…。)」
手に視線を向け拳を閉じたり開いたりしていると突然ドアを開け、姫乃が入ってきた。亮介は姫乃を見るなり目を丸くし背を向けた。その様子に姫乃がフンッと鼻息を漏らした。
「…ちゃんと羞恥心はあるようね。」
「は?」
姫乃はコホンと咳ばらいをするとたどたどしく話し始めた。
「その…お昼は…!あんたを人間じゃないみたいに…ゴニョゴニョ…」
「…を…ろ…!」
後ろを向いたまま亮介が声を出した。せっかく勇気を出したのに遮られた姫乃は明らかにムッとした様子で何?と尋ねた。すると今度ははっきりと亮介が
「ちゃんとした服を着ろ!!」
と叫んだ。
「え?」
姫乃が自分の格好に目を向けると突然わなわなと震えだした。当然だ、ところどころに穴の開いた服からは白くきれいな肌が覗いていた。
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
思い切り閉めたドアは大きな音を立て、天井からはパラパラと埃が降り注いだ。
「はぁ…馬鹿なやつ…。」
そういってる間も顔が熱い。
「兄さん?なんで兄さんの顔が赤くなっとるんです?」
デリカシーのないジャバをキッとにらみ殴りつけるとゴンッといい音が部屋に響いた。
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