第一歩

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第一歩

 「…お二人とも?何かありました…?」 二人の処置が終わり合流すると亮介は気まずそうに、姫乃は怒っているような態度をとっていた。  「…何でもねぇ。」 亮介が答えると姫乃はバツの悪そうな様子で亮介を睨んだ。そんなことお構いなしに亮介がジャバに合図を送った。  「えーっと、兄さんから話を聞いて大体事情は分かりましたわ。何や別の世界から来たそうで。」 亮介はこくりと頷いた。  「それでー」  「兄さん方は《転送(テレフォール)》の類いでこっちの世界に来た、それがわっしの出した結論っすわ。」 亮介の言おうとした結論をジャバが答えた。  「…《転送(テレフォール)》ですか。」  「ええ、いわゆる瞬間移動の魔法です。」  「…なるほど、確かに理にかなっているかもしれませんね。」  「ああ、そうなったらー」  「ちょっと待って!!一回整理させて!!!」 亮介が話そうとした瞬間姫乃が一際通る声で叫んだ。姫乃は眉間に皺を寄せそれを撫で頭を働かせていた。そのうち納得できなかったのか、再び叫び出した。  「魔法ってなに!!?やっぱりここは地球じゃないってこと!!?何であんた達はそれを当然のように受け入れてるの!!?」 こ、これは…まずい!由那は慌てて姫乃を止め、亮介の方へ視線を向けた。亮介は大きなため息をつき、口を開いた。  「…その目で見てんだろ?あの馬男やフラットとかいうネズミ人間共を。痛みがあるんだろ?その足も…。」 そう、俺だけじゃなくこいつらも見て感じているはずだ。ここは異世界だと主張するものを。亮介が立ち上がると姫乃はビクッと体を震わせた。  「足立さん!待ってください!!姫乃ちゃんはー」 亮介は姫乃の前に立った由那をかわすと扉に手をかけた。  「…頭ん中整理出来たら呼べ。…また喚くなよ?」 そう言うと部屋を渡り扉を閉めた。また喧嘩にならなくてよかった。亮介の大人な対応に感謝していると姫乃がみるみる赤くなっていく。  「なにすかしちゃってんのよ!!ほんっとムカつく!!」 …こっちにも少しは見習って欲しいな。由那はジャバと共に姫乃がなんとか納得するまで話を続けた。  ー30分後  「もういいわよ。少し頭が冷えたわ。」 隣から声が聞こえなくなったと思ったらノックとともに姫乃の呼ぶ声が聞こえてきた。亮介がドアを開け姫乃たちの部屋に入ると由那とジャバが力尽き、倒れていた。こいつを納得させるのに精魂尽きたようだ。  それから5分ほど待つと二人は気だるそうに起き上がった。  「んで、さっきの話の結論だがー」 二人の様子を見て大丈夫だととらえた亮介が話を再開した。  「《転送(テレフォール)》で世界間の移動が可能…つまり《転送(テレフォール)》があれば帰れる、ということですよね??」 由那が淡々と結論を述べた。由那に横取りされた亮介は大きなため息をつき肩を落とした。  「って言っても、わっしの出した答えっすから確定ではないでしょうが。」 それはそうだろうが、一つの可能性として考えるには大いにありだ。  「今はその線でいい。それよりも…」 ジャバは俺の言いたいことが分かったらしく、うーんと難しい声を出し腕を組んだ。由那も察したらしく俯いてしまった。  「…《転送(テレフォール)》が簡単には使えないってこと?」 最後に理解した姫乃が口に出した。  「わっしの知り合いに使える人はいませんな。ちゅーかほとんどいないと…何してんです?」 話をしている間に逃げた姫乃に思わずため息をつく。いまだに姫乃はジャバが怖いようで一定の距離を保っていた。  「…まぁいいっすけど。で、《転送(テレフォール)》を使えるもんは知りませんけど、わっしより魔法のこと詳しい奴ならわっしの村にいるんでそいつに聞けば何かわかるやもしれません。」 少しずつ見えてきた希望に由那と姫乃に笑顔が灯る。  「じゃあ向かいましょうよ!!ジャバさんのー」  「それが無理なんすよ。フラットたちから逃げとったら道に迷ってしまって…戻れないんすよ。…さっき通った道も途中で途切れてましたし。」 見えた一筋の希望を打ち砕かれ、由那は肩を落とし姫乃はジャバを責めた。  「何とか思い出しなさいよ!!話はそれからじゃない!!?」  「無理ですって!周りは木だけなんすよ!!?」 姫乃の行動を由那が止めることはなかった。  「…なんだ、じゃあもう行けるじゃねぇか。」 唐突に声を出した亮介と吐いた言葉に視線が集まる。  「なによ…また強がり?」  「足立さん…。」 亮介はため息をつき、立ち上がった。  「いるだろ、この森に詳しい奴らがよ。」 そうこうしているうちに夜が明けたようで、眩い光が森に差し込んだ。 
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