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「それって…まさか!?」
「行くぞ。」
亮介の考えていることにいち早く気づいたジャバが止めようと説得を試みたがその程度で止まることはなかった。
「お前らも着いてこい。すぐに出るから荷物まとめとけよ。」
「は、はい!」
話のつかめていない由那はとにかく荷物をまとめた。
「ちょ、ちょっと待って!!」
亮介が部屋を出る手前、姫乃が大きな声を出した。
「…何だ?まだなんか文句あんのか?」
亮介が睨みつけると姫乃は顔を横に振り赤面させながら小さく話し始めた。
「違うわよ…!…その、助けに来て…くれたんでしょ?そんなボロボロになりながら…。」
亮介に目を向けると本人から流れる血はすでに止まっているものの、制服に滲んだ血からは受けたダメージが見て取れた。姫乃は大きく深呼吸すると再び口を開いた。
「だから!…えと、助かったわ。それと昨日はひどいことを言ってー」
「…何を勘違いしているか知らんが」
最後の一言を言う寸前で亮介が口をはさんだ。
「元の世界に帰るための条件がお前らと関係があったら帰れなくなるだろ。…あくまで俺自身の為だ。」
それを聞き、姫乃の頬が膨らんでゆく。
「あー、そうですか!手間をかけさせて悪かったわね!!」
フンと鼻を鳴らすと亮介は部屋を出た。廊下を2,3歩歩くと由那の声で足を止めた。
「…それでも助けてくださったことには変わりありません。本当にありがとうございました。」
深く頭を下げた由那に亮介は振り返ることなく
「…知ってる顔をした奴隷に合うのは気が引けるからな。」
そう言い残し、一人先に屋敷を出て行ってしまった。
「ひぇぇぇぇ!!」
亮介がケンタウロスの前に立つとケンタウロスたちは情けなく声を上げた。
「ま、まさか森に詳しいっていうのがこいつらのことだったなんて…。」
ケンタウロスに対して苦い思い出を持つ三人は亮介より3歩下がったところから様子をうかがっていた。
「…少し協力してほしいんだが…文句はあるか?」
ズイッと顔を近づけ尋ねた。
「あ、ありません!!誠心誠意を込めて協力させていただきます!!」
二ッと亮介が笑顔になり、反対にケンタウロスたちはおびえた様子を見せた。完全に抵抗力を失ったのか亮介がロープを解いてる間、ケンタウロスが抵抗することはなかった。しかし完全にほどけた瞬間ロロズが立ち上がった。
「只人が!舐めるなよ!!」
「馬鹿なやつめ!簡単に開放しやがって!!」
続いてハングも立ち上がり二人は亮介に襲いかかった。
「…気は済んだか?」
「…はい、ずみまぜん。」
ロロズ達はあっという間に亮介にやられてしまった。亮介は倒れた二人の顔を掴み、自身に引き寄せた。
「選ばせてやるよ。このまま素直に俺の言うことを聞いて森を出るまで手を貸すか、無抵抗になるまでボコボコにされた挙句…奴隷として売られるか。ちょうど金がなくて困っていたところだ。」
亮介の提案に心底震え上がったロロズ達は喜んで前者を選んだ。
「よし!あれは動かせるのか?」
亮介が指差したのは台車だ。
「動かせません。」
「動かせます!」
ロロズがこれ以上好きにさせまいとついた嘘をハングがかき消した。間も無くロロズの考えに気づいたハングが訂正しようとしたが間に合わなかった。
「じゃあよろしく頼むわ。こっちには足を痛めた奴もいるんだ。」
そう言うとロロズ達は渋々と準備を開始し亮介は三人を呼び、了解を得たことを話した。
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