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「あーもう!足立のせいで余計お腹空いたわ。」
「なんで俺のせいなんだよ…。」
日が昇り一時間ほどたった後洞窟を出た亮介一行はジェバスの村に向け足を進めていた。
「そんなことより、あとどれくらいで着くんでしょうか??結構歩いたような…。」
「あー、えっと、あと半分くらいっすね!しんどかったら休憩しましょうか?」
「いや、ここは一気に抜けた方がいい。止まらずに行くぞ。」
そうは言ったもののスイに視線を向けるとどうやら限界に近いようで肩で息をしていた。
「…足立さん、休憩しましょうか?」
さて、どうするか。白川の言う通り女の様子を見れば休憩すべきだろう。だがあいつらがいると考えたら休むことがリスクになる。
「ジャバ、このあたりに休める場所はあるか?」
ジャバは首を横に振った。身をひそめる場所がないとなれば休むことは…ないな。亮介は小さくため息をつくとスイの前で背を向け膝をついた。
「あ、アダチさん?」
「早く乗れ。いつあいつらに遭遇するかわからん。」
「で、でも――キャ!」
亮介は無理やりにスイを背中に乗せ、立ち上がった。やはりスイは軽いらしくまったく苦痛にならなかった。とはいえあまり長時間は持たない。
「さっさと行くぞ。」
そういうとジャバの指示に従い四人は再び足を進めた。
―3時間後
それから森の中を進み続け、ついに生物の生活感のある場所にたどり着いた。何度か同じような場所を通ったような気がするが、多分ジャバなりにあいつらと遭遇した際のリスクを考えていたのだろう。
「兄さん頑張って!!あとちょっとっすよ!」
「あ、ああ…ふっ!」
結局3時間の間亮介がスイを下ろすことはなかった。最後の方は何となくプライドがあったからという理由だった。
「アダチさん…すみませんでした…。」
「ふぅ…問題ない。」
そういいながらもスイは亮介の背から下りようとはしなかった。
「私…もうだめ…」
「ひ、姫乃ちゃん!?姫乃ちゃ…うぅ。」
由那が大声を上げようとしたところ突然電池が切れたように倒れてしまった。まぁ、多分朝ごはんを食べなかったからだろう。それを裏付けるように二人のお腹からぐるぐると音が鳴った。
「はぁ、しゃあないっすね…よっと!」
ジャバが二人を抱え、足を進めるかと動き出した瞬間
「ぉお!?ジャバか!?」
と突然後ろから声が聞こえた。亮介が勢いよく振り返るとそこには少し小柄なジャバと同じ見た目の生物が立っていた。
「おお!ブラッジさん!!お久しぶりです!」
ジャバの反応的にこいつは敵ではない…らしい。
「お前戻ってこれたんか…ちゅうか、こん只人らは?」
ブラッジは背負っていた斧を構え、警戒態勢をとった。亮介も向けられた敵意に反応しスイを下ろし、身構えた。その様子にジャバが慌てて間に入った。
「ブラッジさん!こん人はわっしを助けてくれたんすよ!!敵じゃないっすよ!!」
それを聞き、ブラッジは様子をうかがいながら斧を下げた。亮介も敵意がない照明として両手を上げた。
「…ほんまか?」
「ああ…俺たちはあんたらに危害を加える気はない。…ただこいつを返しに来ただけだ。」
「そう!ほんでわっしがこの村に来てくれって頼んだんです!!」
そこまで言ってやっと斧を背に戻した。
「そうか。すまんな、ここに来る他種族は珍しくってな。」
「問題ない。」
「ジャバを…助けてもろたんや。なんもない村やけどゆっくりしていってくれ。」
ブラッジは亮介たちの間を通り抜け、亮介たちはそのあとに着いた。
少し進むと森が開け、ついに村が顔を覗かせた。見回すとどこを見てもリザードマンが目に映った。どうやら間違いない。
「では、ようこそ!!ジェバスの村へ!!」
一歩前に出たジャバが大きな声でそう言った。
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