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ゼイロの森
「ブハ!」
水面から顔を出した亮介は息を吸い込むと再び川底へ向かった。川底は先ほどとは違い水深は2mほどしかなく、自分たちが通ってきたと思われる穴は跡形もなく消えてしまっていた。亮介は底の岩をどかすもその先は何もなかった。
「フゥー…。」
亮介が川から上がると小さく縮こまった姫乃の元へ向かった。
「…何かわかった?」
「いや、何も。ここはあの公園ではないことは確かだ。」
姫乃はわかってると声を荒げたがすぐに黙ってしまった。当然だ、今は騒いでも仕方がない。
亮介は不意に立ち上がると森の方へ足を進めた。
「ちょっと…!どこに行くつもり…?」
「少しこっちも見ておきたい。もしかしたらどこかにつながっているかもしれないからな。」
「お、女の子を二人にする気!?」
姫乃が思わず立ち上がった。
「…すぐに戻る。」
そう言い残すと亮介は森の中へと入っていった。間も無く亮介の耳に信じられない!!という姫乃の叫び声が届いた。
森の中に入ると見たこともない植物で埋め尽くされていた。知識がないだけなのかわからないがおよそ日本にあるものとは思えない。
「(…あまり離れない方がいいな。どこから来たのかわからなくなる。)」
そんなことを考えながらも足を進めると、あるものを見つけた。
「これは…足跡か?人間のものにも見えるが…。」
その時、ガサガサと自身の後ろから草をかき分ける音が鳴った。
「まったく…女の子を置いていくなんてどーゆー神経してんのよ!」
亮介が森に入ってから姫乃はずっと文句を垂れていた。
「タハハ…まぁ足立さんは気を使ってくれてるんだよ。さっきも体力があるって言って一人だけ川の中を調べてくれてたし。」
「そうだけどさ…。」
姫乃はそのまま不服そうに黙ってしまった。
「…それよりもコマ三郎…大丈夫かなぁ。」
あの時抱えていた子犬であるコマ三郎はいくら探しても見つからなかった。足立君はそもそも噴水に落ちていないと言っていたが私は最後まで抱えていたことをよく記憶していた。あの時、手放してしまったことが悔やまれる。
「…まぁあいつも言ってたけどさ、たぶん噴水に落ちてないって!今頃警察の人たちが保護してくれてるわ。」
姫乃は由那の心情を察して頭をなでた。由那は姫乃に体を預け、涙をこぼした。
草をかき分け亮介の前に姿を現したのは、ネズミと人間を組み合わせたような姿をした80cm程度のまさに地球の生き物ではない生物だった。
「何だ…こいつら!」
亮介はとっさに構えたがネズミ人間はまだこちらに気づいていないようでこちらに来ることはなかった。
「(武器のようなもの…!それも加工されたものか…こいつらには知性があるのか?)」
その時、ガサガサと後方から音が鳴ったかと思うと二匹のネズミ人間が敵意をむき出した様子で現れた。
「…こいつら!!そういう作戦か!?」
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