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亮介は咄嗟に飛びかかった二匹の下を潜り、攻撃を回避し一匹の足を掴んだ。
「つあ!」
それを思い切り木に叩きつけるとギッ!という声を上げ、そのまま動かなくなった。残りの二匹は一発目を外したからかひどく動揺したようですぐにその場を離れた。
「…なんだこれ。ほんとにこれは…現実なのか?」
ー
「今って異世界転生ものが多すぎやしない?」
「異世界転生ものって?」
「馬鹿だね君は…!異世界転生ものを知らないってのかい?いいか?異世界転生ものっていうのはだね、なんの変哲もない地球に生まれた主人公が死をきっかけに別の世界、別の惑星に行くっていうロマン溢れる設定をもつジャンルのことだ。君もこれくらいはー」
ー
同じクラスの奴らが話していたことを思い出す。異世界転生…いや、死んだ記憶はない。なら転移とでも言うべきか?そんなことを考えていると姫乃の叫び声が耳をつんざいた。
「まさかネズミ人間が向こうに!?」
「ちょっと!何よこいつら!!」
姫乃たちはそれぞれ木の棒を持つとネズミ人間から距離を取った。
「姫乃ちゃん!後ろ!」
由那が声を上げ、後ろに振り返ると三匹のネズミ人間が迫っていた。二人は前方から迫る三匹、計六匹に囲まれていた。
「こっちに来ないでぇ!!」
ジワジワと迫るネズミ人間に姫乃が木の棒を振り回し叫んだ。それはネズミ人間の武器に当たり、カンッと音が鳴り折れてしまった。
「あ…」
ゲヘゲヘと気持ちの悪い笑い声を上げネズミ人間は2人に距離を詰めた。
「いや!!」
由那が大きく振り回した木の棒は一匹のネズミ人間に当たった。ネズミ人間はそれに逆上し由那にとびかかった。
「ひっ!」
ゴッと鈍い音が鳴った。由那がゆっくりと目を開けると亮介がネズミ人間の石器を左腕に受けていた。
「あ、足立さん…。」
亮介は歯を食いしばり右腕でネズミ人間の頭を掴んだ。
「ギギ!!」
別のネズミ人間が亮介にとびかかった。亮介は掴んでいた一体を投げ、二体をぶつけた。カランとネズミ人間の手から落ちた槍のような武器を拾い上げると体勢を崩した二体を一気に貫いた。その剣幕に恐怖を覚えた後ろの三体はすぐさまその場を立ち去った。残った一体は亮介に迫った。亮介は石斧をよけるとカウンター気味に拳を繰り出した。バカッという音が響き、それは絶命した。
「はぁ…はぁ…」
ちらりと二人に視線を送るとどうやら腰を抜かしてしまったようで、へたりと座り込んでいた。
「…大丈夫か?」
二人に尋ねると無言のままコクコクと頷いた。二人はいまだ現実とは信じられない様子だった。もちろん亮介もそうだ。異世界転移…どうやらその線で間違いはないらしい。攻撃を防いだ左腕はいまだズキズキと疼く。
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