第十八話:京橋の旅館の仲居部屋

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五分後、ひゐろは風呂敷を抱えて、旅館を営む男の車の元に戻ってきた。 「風呂敷を五つか。ずいぶん荷物が多いな」 「車に入るでしょうか」 「乗せなきゃ、しょうがないだろう」 「お手数をおかけします」 こうして車の中に何とか風呂敷を押し込み、旅館を営む男とひゐろは京橋の旅館を目指した。 京橋は、銀座への入口にあたる。 旅館は京橋川を抜けたところにあり、木造三階建で二層の望楼(ぼうろう)がついていた。 すでに、陽が落ちている。ガス灯が点灯し、趣のある風情だ。 「どうぞ。寒いだろうから、中に入ってくれ。……おーい!お客さんだ、通してやってくれ!」 中から、仲居さんがやってきた。そして、帳場(ちょうば)にいる男も入口にやってくる。 「突然ですが、お部屋をお借りしたいのです。年末で恐縮ですが空いていらっしゃいますか」 ひゐろは、単刀直入にそれを伝えた。 「……本日、ですか?」 帳場(ちょうば)にいる男は、突然の申し出に驚いた。 そして、たくさんの風呂敷を抱えているひゐろを、まじまじと見た。 「はい。本日から一週間ばかり」 「……本日から一週間!」 男は驚いて帳場(ちょうば)に行き、眼鏡を上げて台帳を広げた。
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