第十八話:京橋の旅館の仲居部屋

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朝食を終えると、ひゐろは早速仲居部屋に行った。 一階の入口から最も離れた、奥の部屋だ。 複数の女たちが就寝している部屋のせいか、女性特有の(なまめ)かしい匂いがする。 (ふすま)を開けると布団に潜っている女が二人ほどおり、寝息を立てていた。 ひゐろは風呂敷の荷物を置いた後、そっと立ち去ろうとすると、 「……誰? 新しい人?」 と布団から声がした。 「いえ、一週間ばかりこちらに世話になる者です」 その女は布団から起き出し、おもむろに綿入れに袖を通した。 「昨日、小夜から聞いたわ。あなた、ここの主人の(めかけ)なの?」 「……小夜さん?あぁ昨日の仲居さんですね。(めかけ)のわけがありません!(めかけ)なら、仲居部屋に私を置かないでしょう。『貸家を探しているから』とご主人に事情を話し、ご親切にしていただけにすぎません」 「ふうん。まぁどういう事情か知らないけどさ。ここの主人は、(めかけ)も多いみたいだから」 女はひゐろの顔を見ず、柘植(つげ)(くし)を出して寝ぼけ眼で髪を整えはじめた。 「短い間ですが、よろしくお願いします」 ひゐろはそう告げて、そそくさと女中部屋を出ていった。 再び帳場(ちょうば)の前を通り、ひゐろは男に声をかけた。
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