夢に向かって

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 見慣れた役員フロアを歩いて、一番奥の革張りのドアの前に行った。すると、ドアが開いて眼鏡をかけた秘書の男性が出てきた。  「奥様。総帥がお待ちです」  そう言って、ドアを開けてくれた。  私は会釈しながらゆっくり歩いて行く。和服で毛足のあるカーペットは気をつけて歩かないと転んでしまう。  ふたりの男性がソファに座って待っていた。  若い方の人が立ち上がった。玖生さんに目の辺りが似ている。この人がきっとお父様ね。  「おお、来たか」  「紹介しますよ、織原由花さん。彼女が玖生さんの想い人。結婚前提でお付き合いをしているそうです。そして彼女はもうすぐ次期織原流華道四代目家元に就任される予定です」  「そうか。わしが清家総帥で玖生の祖父じゃ。となりが父親じゃ」  お父様が頭を下げてくれる。  「初めまして、織原由花と申します。玖生さんにはよくして頂いております。ご挨拶が遅くなり申し訳ございません」  かけるように言われて、腰を下ろした。  「さてと。大体のことは志津から聞いているが、玖生とすぐには結婚できないというのは襲名のためだとか……」
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