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「いいんだよ。愛嬌を振りまくのは別な意味で余計な仕事が増える。俺の立場上も慎みが必要だ」
意地の悪い笑みを浮かべ笑っている。
「どこに行くの?」
「そうだな。フレンチなんてどうだ?」
「そんな……この間鍋焼きうどんを作った私にそれを聞く?でも連れて行ってくれるんだったらどこでもいいわ」
「ああ、歩いてすぐだ。よく家族で使っているところだから、すぐに予約が取れた」
私の手を握る。こんなこと初めて。驚いて顔を見る。
「ダメか?」
「……玖生さん」
「今が攻めどきだろ。違うか?」
私があっけにとられているのを面白そうに見ている。
フレンチレストランは素晴らしい内装。食器。テーブルセッティング。何もかもが一流という雰囲気だった。
玖生さんの顔を見ただけで、支配人が現れ、丁寧にお辞儀する。
奥にある個室へ通された。
「ワインでいいか?」
「ええ」
支配人と玖生さんが打ち合わせているのを呆然と眺めながら、美しい調度品に囲まれたこの部屋にも目が吸い寄せられた。
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