過去に繋がる今

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 「嘘だわ。おばあさまもおっしゃっておられたわよ。奥様が必要だって。そのために女性嫌いを克服させたくて、私をカウンセラーのつもりで紹介したんだから……」  「由花。何が言いたい?俺の気持ちをわかっていながらそんなことを言うのか?」  正面から彼を見つめてはっきり言った。  「玖生さん、聞いて。私もあなたが好き。でもどうしても踏み出せなかった。前に付き合っていた健吾と同じであなたも御曹司だったから……それに健吾よりもずっと大きな財閥の御曹司。私なんて不釣り合いなのはわかりきってる」  「何言ってるんだ、由花。俺が好きと今言ったな?それなら何も心配するな。君の踏み出せない気持ちもわかっていた。だから俺の気持ちを押しつけても無理だと思って、君の気持ちがこちらに向くのを必死で待っていた」  私は彼を見つめたまま続けた。  「でも今すぐに結婚はできない。私もこれから家元を継ぐという将来の夢に向かって一番大切な一歩を踏み出す時なの。ふたつの大きな事をいっぺんに出来ない。その余裕がないの」  「そうだな。それもわかっている。俺はもうすぐアメリカへ行く。しばらく帰れないだろう」
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