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「神田と彼女が付き合っていたことが諍いの言葉から漏れた。あのとき、俺はお前が心配で、彼女がきちんとした女性か確認したくて仕事を頼んだ。実はその後今までうちのホテルで花の契約をしていた五十嵐流の家元が俺と彼女の仲を勘違いして、仕事を取られたと吹聴して回っている。神田と付き合っていたことをほのめかして、神田の仕事も彼女が色仕掛けで取ったかのように言い、俺がまた彼女に惑わされて仕事を回したかのように言われているんだ」
玖生はギリギリと手を握りしめた。
「それは……お前、噂を撤回したんだろうな?」
「もちろんだ。すぐに撤回した。だが、彼女を使った理由は当初五十嵐流の家元には個人的理由と言ってしまったのが憶測を呼んだようだ。だが、事実を話すのも彼女のためにならない。適当にごまかしたが、すでに遅かったようだ。本当にすまない」
鷹也は頭を下げた。
「わかった。由花はそのことを知っているのか?」
「どうだろう……お前に何も言ってなかったか?」
「彼女は俺が大事な時期だとわかっているから何も言わないだろう」
「悪いな、玖生。こんなことになるとは思わなかったんだ」
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