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すると入り口から由花が入ってきたのが見えた。俺と鷹也が一緒にいるのを見つけるなり、すぐに鷹也へ向かって駆けてきた。そして深々と頭を下げた。
「中田さん、きっとご迷惑をおかけしてますよね。私のせいで変な噂になってしまっているようで、本当に申し訳ありませんでした」
やはり、知っていたのか。俺が鷹也をひと睨みすると、鷹也は慌てて由花の頭を上げさせた。
「いや、こちらこそ悪かった。君に頼んだ理由を個人的な理由と言ってしまったせいだ」
「私もそういったことに思い至らず、未熟だからです。以前いた神田ホテルのこともこんなに噂になっていたなんて知らずに……」
由花は唇を噛んだ。
「由花。どうしてお前に鷹也が依頼したのか、その本当の理由を噂を流した元凶に教えてやろう」
「え?」
鷹也は今日が二週間に一度の花を代える日で、五十嵐流の家元が来ると話した。
由花が驚いて立ち止まり、俺たちの顔を不安げに見た。
「由花は俺にエスコートされとけ」
そう言って、自分の腕に彼女の手を引っ張り絡ませた。
「玖生さん、や、やだ、何するの……?」
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