4116人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女はびっくりして、手を引こうとした。そうはさせじと上から手を重ねた。
「い、いや、ダメよ。あなたまで巻き込みたくない。それにあなたは今、継承前の大事な時期よ。お願いやめて。スキャンダルになる」
「いいか、由花。お前は俺と結婚前提で付き合うことになったはずだが、間違いか?」
ちろりと睨むと、驚いた顔をしてこちらを見た。
「……まさか、公表するつもり?」
「ああ。俺の覚悟を内外に見せるいい機会だ」
「だめよ、こんなやり方。私のせいで……」
「だからやるんだ」
インカムで何階に家元がいるか、鷹也が確認した。目配せした鷹也の後をついていく。由花は俺の腕を引っ張り、行かせまいとする。
手を叩き、顔を覗きこみ、笑顔を見せてやる。
それでも泣きそうな彼女を見て、わざと頬に軽くキスしてやった。びっくりしたのだろう、真っ赤になった。彼女の腕の力がそのとたんに抜けた。
それをいいことに、引きずるように連れて行く。
「任せておけ」
最初のコメントを投稿しよう!