噂と決意

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 彼女はびっくりして、手を引こうとした。そうはさせじと上から手を重ねた。  「い、いや、ダメよ。あなたまで巻き込みたくない。それにあなたは今、継承前の大事な時期よ。お願いやめて。スキャンダルになる」  「いいか、由花。お前は俺と結婚前提で付き合うことになったはずだが、間違いか?」  ちろりと睨むと、驚いた顔をしてこちらを見た。  「……まさか、公表するつもり?」  「ああ。俺の覚悟を内外に見せるいい機会だ」  「だめよ、こんなやり方。私のせいで……」  「だからやるんだ」  インカムで何階に家元がいるか、鷹也が確認した。目配せした鷹也の後をついていく。由花は俺の腕を引っ張り、行かせまいとする。  手を叩き、顔を覗きこみ、笑顔を見せてやる。    それでも泣きそうな彼女を見て、わざと頬に軽くキスしてやった。びっくりしたのだろう、真っ赤になった。彼女の腕の力がそのとたんに抜けた。  それをいいことに、引きずるように連れて行く。  「任せておけ」
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