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「ま、真白さん!」
唇が離れた一瞬で言葉を放つと、驚いたような顔で見下ろした。
「ん?」
「ほんとうに童貞ですか?!」
色気のある瞳も。優しく甘いキスも。身体を触れる指先も。私の身体は真白さんを欲している。
童貞の技とは思えない。
「童貞だって……男だよ? それに……」
手のひらを胸元に寄せられる。
厚い胸元から感じる心臓が高鳴る音。
どくどくと、鼓動が手のひらに伝わってくる。
「隠してたけど……こんなに緊張してる」
少し照れながら零した言葉に、胸からきゅんと音がするようだった。
「……ずるいなあ。真白さん、可愛くて仕方ないんですけど」
「……俺は泉さんが可愛くて、頭がおかしくなりそう」
甘い声でこぼすと顔を埋めてきた。首筋から唇に優しく触れていく。身体に熱が回ってきた時、真白さんの体が離れた。
じっと真面目な顔で見下ろされる。
「あのさ。1つ疑問なんだけど……」
「……?」
「おばあ様は、『童貞と結婚しなさい』って言い残したんだよな?」
「そうです、」
「それって、俺。童貞卒業しちゃっていいのか、な?」
「え、」
考えてもみなかった。そうだ。ここで交わったら、真白さんは童貞じゃなくなる。
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