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「一緒に住もうか」
「……なんて?」
思わず耳を疑った。唐突に言われた言葉は脈絡のない言葉だったからだ。
聞き違いだろうか。一緒に住む。と聞こえたような。
「お互いに境遇が一緒なわけだろ? お互いに恋人がいるふりをすれば、待ち伏せもやめてもらえるんじゃないかなって」
「いや、だからといって、一緒に住むなんて……」
「元カレが待ち伏せしている家に泉さんを帰すのが、上司として心配なんだよ。ましてや、普通の男ではないだろ? 詐欺師や犯罪者かもしれない! そんな危険な身にいる部下を放っておくことはできないよ! 他に友達の家とか行く当ては?」
頭を左右に大きく振った。どのくらいお世話になるか分からないのに、行く当ては見当たらない。
確かに、楓くんに待ち伏せをされていることを考えれば、この部屋に1人で帰ってくるのは危ない。でも、いきなり一緒に住むことを提案されて、すぐに答えを出すことができなかった。
だって、真白さんと一緒に住むなんて……。
いくら彼が女性嫌いで童貞だとしても、正真正銘男だ。簡単に頷ける話ではなかった。
「私と真白さんが同棲だなんて……」
「いや。同棲ではないよ? 同棲とは、一般的に婚姻関係にない恋人同士が同じ住居に住むことをいうから。その点、俺たちは恋人同士ではない。だから、俺たちは同居だな」
頭を左右に振りながら、細かいことをきっぱりと訂正してきた。
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