子犬

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子犬

 大好(だいす)きだったお父さんが天国へ旅だってしまった。わたしは(かな)しくて(さみ)しくて、お星さまにお(ねが)いをした。 「どうか、お願いします。お母さんを助けてください。お父さんに会わせてください」  お母さんはお(うち)のために朝から夜(おそ)くまで仕事をしている。お母さんだって悲しいのに、お母さんはいつだって(わら)っている。  わたしの背負っている6年の重みが詰まったランドセルは所々汚れてきている。まだお母さんのためにできることは少ない。  わたしは学校帰りの道の雨の中を、傘をさして歩く。ポニーテールの髪が歩くたびに揺れる。 「今日は夕方雨が降るでしょう」  天気予報(てんきよほう)のお姉さんがテレビの画面の中で言っていた。その通りになった。 「キャン!」  いつからいたのか分からない。分からないけど、子犬が後ろから付いてくる。 「柴犬?」  子犬はプルプル(ふる)えながら歩いていた。 「どうしよう……家に連れていっても良いのかな?」  わたしは子犬を抱き上げて少しだけ考える。 ――ダメって言われるかな? だけど、こんな寒い中置いて帰れない。よし、連れて帰ろう!
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