あなたたちが神と呼んだ

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 あれから一週間ほど経ったが、謝るタイミングを見つけられないでいた。何度か母の部屋を訪れて謝ろうとしたが、毎回壁を向いてぬ寝転がっている母の背中を見ると言葉を無くしてしまっていた。時間が経てば経つほど、早く謝らなきゃという焦りと、今さら謝ったところで遅いのではという諦めの気持ちがあった。  そのうち、家にいるのが気まずくなった私は仕事を探し始めた。学校で散々面接の練習はしてきたから自信はあった。駅の近くにオフィスを構える会社に事務職として応募した。だが、履歴書を送る一次選考で落とされてしまった。他の会社にも履歴書を送ってみたが、何枚も届く不採用通知に精神的に疲れ始めていた。だが、面接さえしてもらえば採用される自信はあったので今度は一次選考が書類審査になっていない会社を選んで応募した。すぐに面接の日程を決めて、本番に挑んだ。自信満々だった。自己アピールも志望理由も自分の考えもすべてアピールできて、手応えを感じていた。  だが、二人いた面接官のうちの一人はずっと険しい顔をしたままだった。どこか失敗しただろうかと不安になっていると、その人が初めて質問をしてきた。 「これ聞いてもいいのかな。もうすぐ卒業だってのに、高校を中退した理由は?」  やはり、そこを突かれるのかと急に緊張し始めてしまった。スカートを軽く握って、表情を取り繕って口を開けた。 「実は長いこといじめが続いていて、それに耐えきれず中退という選択をしました。ですが、今後高卒の資格というのはどこにいっても必要になるものかと思いますので、来年度中には高卒認定試験を受けようと考えています」  完璧だと思ったが、その人は大きなため息をついた。 「君がね真面目な人だというのはよくわかるよ。でもね、いじめられていたにしろ何かしらできたことはあるんじゃないの? 嫌なことから逃げてちゃ社会人として生きていけないよ」
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