あなたたちが神と呼んだ

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 翌日、職場からの電話で目が覚めた。一瞬血の気が引いたが、今日辞めてしまうのだから関係ないと、そのまま無視した。祖母は新幹線に乗って来てくれたみたいでお昼前には家の最寄駅に着いていた。連絡を受けて、すぐに祖母を迎えに行った。 「痩せたね。すごく疲れた顔をしてる」  会って一番にそう言われて驚いた。自分では痩せたことに気づいてなかったし、疲れが顔に出ているなんて思ってもいなかった。だが、あんな職場では仕方ないだろう。  祖母はすぐにタクシーを呼んで、私の職場に向かった。車内で祖母は私の手を握って、ずっと優しくさすってくれた。 「おばあちゃんが話をするから琴子はなにも言わなくていいからね。大丈夫だよ」  すぐに職場について、祖母がタクシー代を払う。今までため息をつきながら入っていた工場の入口も今日はこわくない。既にみんな出勤を終えているからか静かだった。そのまま祖母と事務所に目の前まで進んだ。 「先に琴子が入って話をしてね。タイミング見ておばあちゃんも入るから」 そう言われてポケットに何かを入れられたが、確認する間もなくくるりとドアの方に身体をむけさせられた。緊張しながらもノックをすると、工場長の声が帰ってきた。 「失礼します。五条です」  私の顔を見た瞬間、工場長は勢いよく立ち上がった。 「お前今何時だと思っているんだ! 遅刻なんてもんじゃないぞ! 電話も無視しやがってどういうつもりなのか説明してみろよ」 「すみません。今日は辞めるつもりで来ました」  祖母はまだ背中に隠れている。いつ、代わってくれるのだろうと焦り始める。 「ふざけてんのか。お前の母親が頼んできたから仕方なく雇ってやったんだぞ。簡単に辞められると思うなよ。ペナルティとして今日も残業だ。ノルマはいつもの倍な」
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