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それには凄くドキドキとしてしまう。
女の子から抱き締められたことなんて数え切れないくらいあるのに、物凄くドキドキとしてくる。
「園江さんの身体が固まってるのも凄く可愛い・・・。
なんか私、これだけでヤバいかも・・・。」
なんだか私の身体も凄く変になってくる。
砂川さんとエッチをした時にもなったことがないくらい変に。
まるで自分の身体ではないくらいに・・・。
「園江さんのことを女の子として見なかったそんな男のことなんて忘れなよ。
私が忘れさせてあげるから。」
“女の子”のはずの佐伯さんがそんな言葉を口にしてきて・・・
私を抱き締め続けたまま顔を動かし、私のことを見詰めてきた。
「私が愛してあげる。
純ちゃんの・・・いや、純愛ちゃんのこの命もこの身体も私が本気で愛してあげる。」
「でも、私・・・女で・・・。」
「うん、知ってるよ?
純愛ちゃんはめちゃくちゃ可愛い女の子だもん。
めちゃくちゃ可愛すぎて私の下半身は濡れまくってる。
・・・恥ずかしい?ヤバいね、マジで可愛すぎる。
こんなの、私が本気になっちゃう。」
「佐伯さんって・・・そういう対象が女性なの・・・?」
「いや、全然。
こんなことになってる自分にも死ぬほど驚いてる。
死にそうになってるからかな?
私の中にある男性的な部分が全て最後の力を振り絞りに来てる。
私におちんちんがあったら今この場で抱いてたよ?」
全然意味が分からないけれど、目の前にいる佐伯さんを見てこんなにもドキドキして身体が変になってしまうのは、私も佐伯さんのことを“男の人”のように感じてしまっているからかもしれない。
「ごめんね、純愛ちゃん・・・。
セクハラかな・・・キスしたい・・・。」
そんなことまで言われたのに、私は頷くことも断ることも出来ない。
“男の人”から“女の子”としての好意を初めて向けられて、こんな私ではどうしていいのか分からない。
「嫌・・・?」
「嫌ではないけど・・・。」
「じゃあ、遠慮しない・・・。」
佐伯さんがそう言って・・・
私の顔にゆっくりと顔を近付けてきて・・・
佐伯さんの綺麗で可愛い顔が、なのに不思議と格好良く見える顔が近付いてきて・・・
「・・・・・っ」
私の唇に佐伯さんの唇が・・・“男の人”の唇が少しだけ触れた。
その瞬間、私の心も身体も一気に熱が吹き上げた。
「んっ・・・・・」
思わず漏れた声に、私のことを優しく抱き締めている佐伯さんがバッと勢い良く離れた。
「そんなに可愛い声は本当にダメだって!
あぶな~い!!
完全に舌まで入れちゃうところだった!!」
“女の子”に戻った感じがする佐伯さんが可愛らしく言ってきて、残念そうに続けてくる。
「私が本物の男だったら良かったのにな。
そしたらすぐにでもエッチ出来るのに。
気持ち良いコトを沢山してあげられるよ、私。」
困った顔で笑う佐伯さんが悲しそうな顔で私のことを見詰める。
「大丈夫、私が園江さんのことを女の子にしてあげるから。」
「そんなこと出来るの・・・?」
「うん、余裕。
だって園江さんって女の子としてめちゃくちゃ可愛いもん。」
「そんこと初めて言われたよ・・・。」
「園江さんの“初めて”、私がいっぱい貰っちゃった!」
佐伯さんが嬉しそうに笑った後に真剣な顔で私のことを見詰めた。
そして・・・
「エッチを頼めそうな男はいないの?
出来れば園江さんのことをちゃんと大切には思っている男。」
そう聞かれ、一瞬だけ砂川さんの姿が浮かんでしまい、慌てて首を横に振った。
そしたら佐伯さんが不貞腐れた顔で口を開いた。
「いるじゃん、幼馴染みの田代っていう男。
今からあいつのことを呼び出すから、大切にエッチして貰って?」
「え!?田代!?無理だよ!!
田代は私のことを女として認識してない代表だから!!」
「男なんて穴があれば良いんだから大丈夫だって。
それにあいつは園江さんのことをちゃんと好きみたいだから、頼むとしたらあいつじゃない?」
「でも・・・なんでエッチ?」
「女の子として男から愛して貰いながらエッチをしたいんでしょ?
まずはそこを達成しないと園江さんの女の子の部分を引き出せないと思うから。」
「そうかもしれないけど、でも田代は私のことを女の子として愛してくれないし・・・。」
反論した私に佐伯さんは凄く怒った顔になった。
その顔は不思議と女の子の顔には見えず、何故かまた“男の人”に感じてしまう。
「純愛ちゃんの命も身体も私が貰ったんだよ?
田代と愛のないエッチをしたとしても、純愛ちゃんの命も身体も私が本気で愛してるから大丈夫。」
そんなことを言って・・・
「だから純愛ちゃんは自分のことを人間として大切にしてくれるおちんちんがついてる相手とエッチして。」
“男の人”になっている佐伯さんがそう言う・・・。
「女の子の純愛ちゃんのことを本気で愛してくれる男が現れた時、私が純愛ちゃんの命も身体も純愛ちゃんに必ず返すから。
それまで純愛ちゃんの命と身体は私が大切に仕舞っておく。」
そんなよく分からないことを言って、私のことをまた優しく抱き締めてくれた。
「だから大丈夫、大丈夫だよ純愛ちゃん。
これからの純愛ちゃんの人生は私が必ず楽しいものにしてあげるから。
私の残りの命を全て使って、私が純愛ちゃんのことを幸せな女の子にしてあげる。」
「佐伯さんがどうして私にそんなことを・・・?」
「そんなの、私が純愛ちゃんのことを好きになったからに決まってるでしょ?」
「え・・・?」
「鈍感で可愛いね。
私、女の子としての純愛ちゃんのことを好きになっちゃった。」
驚く私に佐伯さんは照れたように笑った。
こんなに綺麗で可愛い顔なのにやっぱり不思議と男の人に見える。
「今の私はただ命を減らすだけの毎日なの。
だから私が付き合ってあげる。
純愛ちゃんのつまらなくて疲れる毎日が終わるその日まで、私が男として女の子の純愛ちゃんと付き合ってあげる。」
佐伯さんの真剣な“格好良い顔”がまたゆっくりと近付いてくる。
「嫌?」
「嫌ではないけど・・・。」
「じゃあ、遠慮しない。
今から私は純愛ちゃんの彼氏ね?
2人だけの秘密の関係だよ?」
もっとドキドキとしてしまうそんな言葉を口にした佐伯さんの唇が、また私の唇に少しだけ触れた。
30歳にもなって男の人と1度も付き合ったことがない私に彼氏が出来た。
女の子だけど女の子ではない、“普通”ではない彼氏が出来た。
でも・・・
嫌ではなかった。
むしろ私の心も身体もこんなにも喜び、こんなにも温かくなった。
砂川さんと会えなくなってから初めて私は心から落ち着けた。
華奢な佐伯さんの身体を少しだけ抱き締め返し、涙を流した。
私の心と身体は佐伯さんが大切に仕舞ってくれたのだと分かる。
流した涙はこんなにも温かく頬を伝ったのを感じたから。
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