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20時過ぎ
「もう1回いくからな!?」
「ちょっと・・・待って・・・!!」
「待たねーよ!!俺もう限界!!」
「待ってったら・・・!!」
「いくぞ!?」
苛立っている田代の片手が私に向かって伸びてきた。
「せーーーーーのっ!!!!」
18時まで佐伯さんと過ごした会議室の中、今は田代が私の向かい側の席に座っている。
“せーーーーーの”と言われても何も言えない私に田代は上半身をテーブルの上に大きく倒した。
「また言わねーのかよ!!!
1時間前から何も進展なしかよ!!!
ここの経理部の人からの“園江さんが大変なことになってるからすぐに来て”っていう電話で、俺は大急ぎで来たんだぞ!?
月初だし年度始めだし、めちゃくちゃ忙しい中で駆け付けてきたんだぞ!?」
「ごめんね・・・。」
「そこは“ありがとう”にしておけよ。
何年の付き合いだよ、俺に隠し事なんてするなよ、寂しいだろ。」
「うん、ありがとう。」
私の大切な幼馴染みは当たり前かのように私のことも大切にしてくれている。
だからどんなに恥ずかしくてもちゃんと言葉に出そうとまた口を開く。
幼稚園の頃から毎日のように見てきた田代の顔に向かって声を出そうとする。
だけど、やっぱり・・・
「言えない・・・!!!」
軽い下ネタくらいだったら田代の口からも出てくるけれど、田代とは全然そういう話をしたことがない。
田代とどころかマナリーとも望ともしたことはない。
“エッチがしたい”だなんて、私はどうしても恥ずかしくて口に出来ない。
田代の反応が怖いとかそういう話ではなく、単純にどうしても恥ずかしい。
「一体なんなんだよ・・・。
じゃあ俺から当てにいくぞ?」
「うん、そうしてくれるとありがたい。」
「ここの会社の女の子達からモテまくった?」
「微妙に当たってもいるけど今回は別件。」
「まさかの、男からモテてテンパった?」
「それは何ともいえないけど今回は別件。」
「仕事についていけない?」
「それは当たってるけど今回は別件。」
「お前の兄貴が“残念な兄”になり兄貴が発狂?」
「昨日の時点で怒ってたけど今回は別件。」
「俺と一緒にいられなくて寂しくなった?」
「それは全然違う。」
「少しは当たってるだろ!?
じゃあ・・・」
──────────
──────────────
────────────────・・・・
「ぜんっぜん当たらねーーーーーっ!!!」
あれからまた30分もの時間が経ってしまい、田代はテーブルに勢い良く突っ伏した。
「もう降参!!答えは!?」
「言えないよ・・・。」
「言えよ!!!
じゃあまた明日にするか!?」
「明日になったらもっと言えない・・・。」
「ウジウジすんなよ!!男だろ!!?」
「女だよ。」
「え!?マジで!?」
「バカ。」
田代が顔を上げながら大きく笑い、椅子から立ち上がった。
「喉渇いたから休憩。
自販機行こうぜ!!」
「奢らせて。」
「それは当たり前だろ!!」
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