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周りにある庶民のエルフ達の家がミニチュアに見える位に、大きくて立派な赤茶のレンガで造られた城。
これが、父上の造った妖精王の城だ。
俺達の住む国を人間は色々想像するだろうが、建物や服装は実際あまり変わらない。
何故なら、エルフ達は姿を見えなくする魔法や姿を変える魔法を使って人間界を行き来し、その生活を覗いてお手本にしているからだ。
服装は大体布を使った羽織をアレンジした物が多く、身分が高い者は素材が絹だったり装飾が施されていたり。正装には貴族や王族が身に纏っているような、キッチリした西洋服に似た物。
俺も一応、この妖精の国の王子。
身なりはそれなりの物を身に付けているし、普通に生活する分には何不自由ない。
そう。
普通に生活する分には、な……。
妖精王の城の一角にある自室。
俺は窓際にある椅子に座り、机に頬杖をつきながら窓の外を眺めた。
外は晴天。
だが、俺の気持ちは晴れない。
愛しい妻、ルナ。
彼女を失ってから、俺の心はずっと曇ったままだった。
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