第1章(1)

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特に楽しい事も嬉しい事もなく、ただ生きているだけの無とも言える時間を、もう百年も過ごした。 人間よりもはるかに寿命の長い俺達。 ーーけれど、意味がない。 時間がいくらあっても、何不自由ない生活があっても、無の時間では何の意味もなかった。 今、俺が生きている唯一の希望。 それは、 ーー彼女(ルナ)が生まれ変わるのを待つーー その希望だけが、今日まで俺を生かし続けていた。 ガチャッ!! 「バッ、バロン様ッ!! 大変ですっ!バロン様ぁ~ッ!!」 ノックもなしに、挨拶もなし。 突然扉を開ける無礼者。 今俺がルナを失った傷心の(こんな)状態じゃなかったら、間違いなく打ち首にしてくれる。 命拾いをしたこの無礼者はシュン。 俺が幼い頃からの世話役で、まあ身分違いはあるが俺の幼馴染だ。 「朝からうるさい。要件はなんだ?」 溜息をつきながら顔だけ向けると、シュンは俺の前で片膝をついて呼吸を整え、今にも泣き出しそうな瞳で見つめてきた。 「バロン様!お喜び下さい! ルナ様が……。ルナ様の生まれ変わりの者が見付かりました!!」 ーー俺は一瞬、呼吸が止まった。
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