1370人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
その時、私はかなりこの教会の好きなところを熱弁したことを思い出す。それを彼は嬉しそうに聞いていた。
「あの時の菜々のお陰で今の俺がいる。あの日、君に会わなければ俺はこの仕事をやめていた」
そんな……。
「だから、君の父上が持ってきた見合いの釣書で、菜々の写真を見つけた。そして仕事を理由に会いに行った。そこでまた凛とした菜々に見惚れた」
まさか、初めから瑠菜ではなく私をみていてくれたことに嬉しさと、驚きで感情がぐちゃぐちゃになっていく。
「一緒に住むうちに、どんどんそれは確かな愛に変わって、今はもう絶対に離してやれない。菜々を愛してる。一生かけて菜々の気持ちを俺に……」
そこまで聞いたところで、私はたまらず走り出していた。勢いよく彼の首に抱き着いてボロボロと涙をこぼす。
「菜々?」
少し戸惑ったような声音の彼を、いつものお返しといわんばかりに強く抱きしめる。
最初のコメントを投稿しよう!