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「いいねぇ! 桐生さん、こういうキュートな子が好みなんだね!」
「え!? いや、ちょっと。待っ……」
「名前は、安達 比呂(あだち ひろ)くん。年齢は、19歳。いやぁ、若いねぇ!」
笹山の勢いに、隼人は諦めた。
(何とか彼には、早急に辞めてもらうようにお願いしよう)
突然、誰かと同居するなど、とてもじゃないができそうにない。
隼人は、憂鬱な気分でディスプレイを見た。
そこには、まだ幼さの残る男の子が映っている。
淡い栗色の髪に、白い肌。
くるっとした丸い目に、明るい笑顔。
白とライトブルーのボーダーシャツの上から、黄色いパーカーを羽織っている。
飾り気は無いが、清潔感のある服装だ。
そして、そこからのぞく彼の鎖骨に、隼人はドキリとした。
思いがけずに、妙な色香を感じ取ってしまったのだ。
(いや、馬鹿な。男の子だぞ)
うろたえていると、笹山が突然スマホを寄こしてきた。
「はい。比呂くんに、採用決定伝えたから。桐生さんも、彼に何か言ってあげて」
「え!?」
笹山の仕事が早いのは、今に始まったことではないが、隼人は焦った。
(何て喋ればいいんだ?)
考える間もなく、比呂の方から話しかけてきたが。
『もしもし! 採用ありがとう! 僕、一生懸命がんばるね!』
「あ、ああ。よろしく頼むよ」
『僕のことは、比呂って呼んで!』
「う、うん、解ったよ」
会話は短いものだったが、その明朗な声は隼人の気分を少しだけ上げてくれた。
しかし……。
「いきなりタメ口、か。大丈夫かなぁ……」
気が付くと笹山の姿は、すでに無い。
彼のことだから、マンションの手続きやら比呂との契約やらに、さっそく動き出したに違いない。
「安達 比呂くん、か」
どんな少年なんだろう。
そして、彼との生活に、どんな出来事が待っているんだろう。
隼人のデビュー25周年は、波乱の幕開けになりそうだった。
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