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第二章 プロジェクト始動
「いやぁ、いい部屋じゃないか! ね、桐生さん!」
「……そうですね。いや、あの。もう、家具まで入れちゃったんですか?」
夜の楽屋で話をしてから三日後に、隼人は笹山に連れられて新居へ引っ越していた。
ハイグレード、とまではいかないが、そこそこ高価な物件に、これから住むことになる。
そして……。
「落ち着いたカーテンの色、さりげないインテリアオブジェ、潤いのあるグリーン。比呂くんのセンスは、さすがだな!」
「任せといて!」
ハウスキーパーの比呂まで、すでにいるのだ。
全く物怖じしない空気を纏い、明るい笑顔を振りまいている。
いそいそと、隼人の前に衣類や雑貨を並べて見せる。
「これが、部屋着。そして、パジャマ。タオルに、歯ブラシに、コップ。パソコンに、デスクライトに、マウスパッドに……」
まだまだあるが、比呂はそこで、笹山を見上げた。
「笹山さんの指示通りに、揃えておいたからね」
「ありがとう。これで、いよいよプロジェクトが始動できるぞ!」
まるで、隼人ではなく笹山が、ここに住まうかのような言い草だ。
温厚な隼人も、さすがに憤りを覚えてきた。
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