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第一章 波乱の幕開けデビュー25周年!
「お疲れ様でした!」
「はい、お疲れ様!」
そんな声の飛び交う、収録スタジオ。
桐生 隼人(きりゅう はやと)も、明るく挨拶を済ませ、ドアを開けて廊下へと出た。
深夜だというのに、数名のスタッフが忙しそうに歩いている。
そして、隼人を見かけると、必ずこう言うのだ。
「おはようございます!」
ここは、大手放送局のビルの中。
一日中、たとえ真夜中でも、交わす挨拶は『おはようございます』だ。
そしてその言葉に象徴されるように、この高層ビルは不夜城だった。
朝も昼も夜も、どこかで誰かが働いている。
そんな世界で、隼人はこれまで生きてきた。
芸能界という、光と影の中に、生きていた。
180㎝以上ある高身長を、引き締まったボディが包んでいる。
癖の強い黒髪は、放っておいてもピシリと決まる。
彫りの深い整った顔立ちは、どこから見てもイケメンだ。
子役としてデビューした時から、天才と謳われてきた隼人。
間もなく、芸能活動25周年を迎えるが、その道は順風満帆だった。
それでも決して驕り高ぶることなく、腰の低い人当たりがいい性格は、愛されていた。
ただ彼は、最近やけに疲労感を覚えていた。
明るく振舞うその影で、肩を落として溜息をついていた。
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