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自転車
自転車で二人乗りをしていた。
彼女が後ろに乗って、俺につかまっていた。
彼女の家に帰る途中だった。
何か大きな段差につまづいて自転車がよれた。
「痛っ!」
足を押さえて、うずくまっている。
「大丈夫?」
「うん…ちょっと痛いけど、大丈夫」
彼女の顔が苦痛にゆがむ。
「靴を脱いで、ちょっと見せて」
彼女は恐る恐る靴と靴下を脱いだ。傷が深く血がどくどくと流れている。
「病院に行こう」
「いや、大丈夫だから。このまま家に帰ろう」
「でも…それだいぶん、痛そう…」
「ホントに大丈夫だから、お願い、病院はいいから…」
彼女は血のついた靴下をはき靴をはいた。
「帰ろう。もうすぐ家だし」
俺は彼女のいうことを聞いて、病院ではなく、彼女をまた自転車の後ろに乗せた。
彼女はいつもの駐輪所で「ありがと」と言った。
彼女は少し足を引きずりながら家に向かった。
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