憧れのあなた──過去

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──そしてその日の仕事終わり。 定時頃に仕事が終わった私は、会社のビルを出たところで電話をかけた。押し間違いのないよう、名刺をじっくりと見ながら。 どうせしばらく出ないだろうな、と思っていたが、意外と一コールで電話は繋がった。 『はいもしもし』 「あの、お疲れ様です。寺坂です」 『ああ寺坂さん、どこに居るの?会社?』 「今出たところです」 『じゃあ明治通りの交差点に来れる?今車だから、拾っちゃっていいかな?』 「はい、お願いします」 そして私は、すぐそこの明治通りの交差点まで歩く。 駅とは逆方向だし……小林さんとデートしたとなれば、会社の女性陣に刺されそうだ。だから頼むから見つかりませんように、なんてことを願いながら歩いていた。 そして交差点にたどり着くと、ハザードを焚いて止まっている車が見える。そしてパワーウィンドウがゆっくり下がって、彼が私に手を降った。 私も手を振り近付くが……近付くにつれ、嫌な汗が出てくる。 (車……BMWじゃん………) いや、仮にもまだまだ若そうなこの人がこんな高級車に乗っているなんて……しかも使い古した中古車風ではなく、物件に例えると新築か築浅物件並みの車だ。 「乗って」なんて言われるが、正直私なんかが乗っていいのだろうか……。そんな気持ちを抱えながら、恐る恐る助手席に乗り込んだ。
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